今季は3季ぶりに総入場者数が増加に転じた。楽天の日本一や田中の連勝記録、ヤクルト・バレンティンの60本塁打など大記録が生まれたこともあるが、「ボールがまた飛ぶようになったことが大きい」と指摘する関係者は少なくない。
2年間にわたり“飛ばないボール”として定着していた統一球が、3年目に仕様変更された。数字は正直だ。本塁打数は両リーグ合わせて昨季の881本から1311本に激増。チーム1試合平均得点も3・26点から3・99点に上昇した。派手な試合が増え、ファンを再び球場に向かわせたとの見方に説得力はある。
「選手にはより公平なボールになった」というラミレス(前DeNA)のように、極端な「投高打低」が是正されたことを歓迎する選手も多い。
問題は、変更が秘密裏に行われていたことだ。発覚したのは開幕から3カ月近く経過した6月。NPBは「混乱を避けるため」と釈明したが、製造するミズノ社に口止めするなどの隠蔽(いんぺい)工作も。加藤良三前コミッショナーは「直前まで知らなかった」とし、存在意義さえ問われる事態となった。
NPBには抗議が殺到。選手会から事実上の退任要求が突きつけられ、コミッショナーは9月に辞任を表明。自身が主導した統一球が、自らに引導を渡す結果になった。事実関係を調査した第三者委員会は、報告書で「業務執行の決定権および責任の所在の曖昧さ」を挙げ、NPBの組織体制の見直しやコミッショナー制度の強化などを提言している。
難航した次期コミッショナー人事こそどうにか年内決着をみた。しかし改革の道筋をどうつけるのか具体的な議論はこれからだ。「国際基準に合わせる」という目的で導入された統一球は皮肉にも、日本球界の根深い問題を浮き彫りにする形になった。