【ワシントン=柿内公輔】米政府と議会は年明けから原油輸出解禁に向けた検討を始める。「シェール革命」で原油生産が急増する米国は世界最大の産油国となる見通しで、石油ショック以降、約40年続いた禁輸政策について「見直す機運が一気に高まった」(複数の関係筋)。エネルギー需給が逼迫(ひっぱく)する日本や各国にも影響を与えそうだ。
エネルギー問題の重鎮でオバマ政権に影響力をもつ上院エネルギー天然資源委員会のマカウスキ議員(共和)は来年1月上旬、原油輸出を解禁した場合の利点や注意点などの論点を整理した報告書を発表する。
議員の側近は「直ちに(解禁の)法制化へと導く趣旨ではないが、ここから議論が始まる」と強調。「マカウスキ・ペーパー」が解禁の是非をめぐる議会審議の「たたき台となる」(議会筋)可能性が高い。
エネルギー省のモニツ長官は今月、輸出再開を議会と議論する機が熟したとし、政府としても検討を始める考えを示唆。業界団体の米石油協会(API)も20日、解禁を政府と議会に求める方針を表明済みだ。
米国は石油ショックを受け、1975年から米企業に原油の輸出を原則として禁じてきた。だが近年はシェールオイルの開発で生産が急増。国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年までにサウジアラビアを抜き最大の産油国に躍り出る見通しだ。
米国産原油の輸出が解禁されれば、「中国やインドなど高成長に伴いエネルギー需要が拡大している新興国が食指を動かす」(米電力業界関係者)とみられ、原発の稼働停止に直面する日本のエネルギー確保につながる可能性もある。
米国が輸出解禁を想定しているのは生産がだぶつく軽質原油で、重質原油は当面、中東など海外からの輸入に頼る見込み。エネルギー安全保障や市場への影響への懸念も議会の一部にある。オバマ政権と議会は内外の反応を見極めながら慎重に判断するとみられる。