黄昏(たそがれ)時を「逢魔(おうま)が時」ともいいますが、高級住宅街で知られる東京・田園調布で夕刻に起きた中1女子誘拐は、現代人の浅はかさと闇の深さを改めて見せつけられた事件でした。
犯人は埼玉県に住む43歳の会社員と、沖縄から出てきたばかりの無職青年2人という奇妙な取り合わせ。ネットの闇サイトがなければ、出会うことのなかった3人が、誘拐で身代金を奪おうという前時代的な犯罪になぜ手を染めたのでしょうか。ことに中年男は「教育熱心ないいお父さん」と近所でも評判だったそうです。スピード逮捕は、所轄の警察官のお手柄ですが、警視庁が女子生徒の無事と、2人の犯人逮捕を丸1日隠していたのは、褒められたものではありません。もし翌日も取り逃がしていたらどうなっていたことか。特定秘密保護法案の審議入りとも重なり、後味の悪さが残りました。(編集長 乾正人)