【鑑賞眼】「ショーシャンクの空に」 演劇の力で「名作」に広がり | 毎日のニュース

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 演劇の醍醐(だいご)味は終演後にも訪れる。観客が次々と立ち上がり、歓声と拍手が鳴り止まないスタンディングオベーション。本作のように、3幕3時間にもおよぶ長尺の芝居で、そういう光景を目の当たりにするのは珍しいかもしれない。

 名画の舞台化、アカデミー賞ノミネート作品…。次々と並ぶキャッチコピーは俳優らにどう降り注いだのだろうか。記者のそんな心配をよそに、舞台上での“回答”は実に明快だった。緩急自在の畳み掛けるような演出は、映画とは一線を画す。そして、舞台経験を積んだ俳優陣らは湧き上がる感情を芝居にのせてくる。

 原作は米作家スティーブン・キングの小説で、映画は1994年に公開。殺人の罪を着せられ、投獄されながらも希望を失わない元銀行家、アンディー(成河(ソンハ))のひたむきな姿が周囲に影響を与えていく話だ。

 それを下敷きに、長い年月と劣悪な環境、苦悩、葛藤、希望を成河が等身大の演技で体現してみせた。対峙(たいじ)するのは老囚人、レッド(益岡徹)。30年以上の服役で希望を持つことの怖さを抱えていたが、アンディーを見守っているうちに心が揺れ動いていく。その様子を、益岡が深みのある演技で表現する。

 脇を固める俳優陣は個性派揃いで、軽妙な動きが観客をときに笑いに誘い、グイグイ引き込む。演劇の力で、名作の新たな広がりを味わった。10日まで、東京・東池袋のサンシャイン劇場。大阪、福岡、名古屋、松本公演あり。(堀口葉子)