【新聞に喝!】見落とされた新聞統合の歴史 京都大学大学院教育学研究科准教授・佐藤卓己 | 毎日のニュース

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 産経の7日付「主張」は「1万円支給 バラマキより軽減税率を」と題し、政府の消費税対応を批判している。確かに、低所得者の「逆進性」対策として現金給付は一時しのぎであり、「コメやみそといった生活に欠かせない基礎的な食料品など」への軽減税率適用が必要なことはまちがいない。だが、それと並べて「新聞や雑誌などの活字メディア」への適用まで要求する際には、もっと丁寧な説明が必要だろう。

 なるほど新聞は「思索のための食料」であり、欧米で活字メディアへの軽減税率は一般的だ。特に「知識課税」反対運動の伝統があるイギリスでは、標準税率20%に対して新聞紙にはゼロ税率が適用されている。新聞紙が民主化で果たしてきた歴史の重みゆえだろう。

 さて、9月6日付産経は新聞への軽減税率適用を要求する「新聞協会研究会意見書」の全文を掲載した。論点整理には有益な文書だが、メディア史研究者として違和感を覚える箇所もある。例えば、全国紙と一県一紙を中心とする現行システムを全面肯定する没歴史的な記述である。このシステムによって「ニュース、情報などの多様性が確保され」「日本の民主主義が西欧並みの高い水準を維持し、発展させる要因になっている」というのだ。