【産経抄】10月13日 | 毎日のニュース

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 タンスにしまっていた半袖シャツをあわてて引っ張り出して電車に乗った。東京は連日の暑さで、きのうは最高31・3度を記録し、「最も遅い真夏日」を更新した。亀戸ではあまりの暖かさに咲き出した桜もあったとか。

 ▼一昨日までの「記録日」は、大正4年10月9日だった。このころ第一次大戦は苛烈の度を増し、戦場と化した欧州を尻目に日本は、大戦景気に沸いた。事業で一発当てて一夜にして金持ちになった「成り金」が、花街で羽振りをきかせた。

 ▼平成のバブル紳士と同じく栄華は長続きせず、8年後には関東大震災が襲うのだが、もちろん当時の人は知るよしもない。100年近く後の東京が、平均で3度も気温が上がることも想像だにしなかっただろう。

 ▼気象庁の統計によると、今年は特に3月が暖かく、大正4年より約1・8倍、平均5・5度も上がり、今月も3月に次ぐ上昇度をみせている。地球温暖化の元凶が、二酸化炭素(CO2)だけにあるとは思わないが、原子力発電をすべてやめ、火力発電所をフル稼働し続けた場合のツケは、CO2排出量の激増という形で払わされることになる。

 ▼隠居生活に飽きたのか、小泉純一郎元首相は、最近あちこちで「脱原発」を訴え、教祖的存在に祭りあげられつつある。確かに原発がなければ事故も起こらず、厄介な核廃棄物もこれ以上増えない。

 ▼新たなクリーンエネルギー開発を急げ、との主張も一理ある。だが、きょうの国民のくらしを守り、あすへの布石を打つのが本当の政治家である。「脱原発」に行き着く前に日本丸が沈没しては何にもならない。それでも、というのなら「黄門新党」をつくられたらどうだろう。助さん、格さんがはせ参じるかどうかは知らないが。