東京都三鷹市の自宅前で、高校3年の女子生徒が刺され死亡する痛ましい事件が起きた。ストーカー行為を警察に相談しながら凶行は防げなかった。被害者を守る方法は本当になかったか。
警察は被害者の立場に立って真剣に検証してもらいたい。警察は万能の存在ではない。さまざまなストーカー行為などの相談が寄せられ、事件の深刻さの判断も難しい。それでも、被害者が最後に頼れるのは警察なのだ。
凶器を持った容疑者から被害者を守ることができるのは、警察しかない。危険があれば、被害者や家族は躊躇(ちゅうちょ)せず、早急に警察に相談することが大事だ。警察も法にとらわれることなく、柔軟な積極対応で信頼に応えてほしい。
事件は8日の夕方に起きた。この日の午前、女子生徒は両親とともに、自宅近くの警視庁三鷹署にストーカー被害を相談していた。署は3回、容疑者に電話連絡を試みたが、応答はなかった。
前週の4日には、女子生徒の高校の担任教諭が高校近くの杉並署に相談していた。高校によると、女子生徒にはメールで「殺すぞ」などの脅しもあった。
杉並署は、早急に女子生徒の自宅がある三鷹署に相談するよう勧めたのだという。
警察の迅速で積極的な対応を促す改正ストーカー規制法は、今月施行されたばかりだった。
過去に「警察に相談しても動いてくれない」との批判があったことを受けた改正法では、被害者の住所地以外に加害者の住所地や、つきまとい現場の警察も警告や禁止命令を出せるようになった。
警察庁も昨年8月、都道府県警にすべての被害届を原則として即時受理するよう指示した。
杉並署では被害届を受理できなかったか。女子生徒の被害内容を把握して三鷹署に通報することはできなかったか。少女の命が失われた今、凶行を防げた可能性を、改めて検証すべきだ。
昨年11月、神奈川県逗子市の殺人事件では、被害女性が加害者から大量のメールを送りつけられていたが、規制法にメールについての規定がなく、警察はストーカー事案の対応ができなかった。
今回の改正法でメールの連続送信も規制対象に加えられた。犯行形態の変化に対応する法改正は必要だが、目の前の危険に対処する柔軟姿勢はさらに大事だ。