昨年、中国全土のテレビ局の夜のゴールデンタイムに放送された連続ドラマ200本余りのうち、撮影所「横店影視城」(浙江省東陽市横店)でつくられた日本軍との戦争などを描いた抗日ドラマは48本だった。中国で一本のテレビドラマは20話から50話で構成されるのが一般的。抗日ドラマは合計すると軽く1千時間を超えることになる。
中国で抗日ドラマが量産されるようになったのは最近のことである。中国紙、南方週末の統計によると、1949年から2004年までに制作された抗日ドラマは約150本。毎年平均3本のペースだったが、05年に20本を超え、それから年々増加した。
検閲通りやすく安全
急増する背景には、共産党政権が近年、愛国主義教育を強化したことに加え、共産党宣伝部の厳しい検閲制度のなかで審査を通りやすいという事情がある。
現在の中国人の生活をテーマとすれば、就職難や不動産価額高騰などのさまざまな問題を取り上げざるをえない。正面から社会問題に取り組もうとすれば当局の機嫌を損ねて発禁処分となり、投資を回収できないというリスクが高くなる。このためドラマ制作業者は「安全」な抗日ドラマを選ぶ傾向が強くなる。
また、北京で抗日ドラマの脚本作りに携わるシナリオライターは、「戦争ドラマの敵役は日本しかいなくなった」と指摘する。