【伝統×デザイン】手仕事の日本ふたたび 燕の鎚起銅器 一枚の板を叩いて生まれる | 毎日のニュース

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 〈職人が、普段は閉じている工場(こうば)の扉を開いて、みなさまのお越しをお待ちしています〉

 こんなメッセージに誘われ、上越新幹線の燕三条(つばめさんじょう)駅に降り立った。今月2日から5日間、金属加工と鍛冶で有名な新潟県三条市・燕市の54社が参加し、初のイベント「燕三条 工場の祭典」が開かれたのだ。「ものづくりに懸ける職人たちの真摯(しんし)な取り組みを、バイヤーやクリエイター、一般消費者らに広く見てもらうことで、的確な情報発信ができたら」と三条市役所経済部商工課の渋谷一真さんは狙いを語る。

 せっかくなので職人さんの指導のもと、何か作ってみたい。燕市で創業197年、鎚起(ついき)銅器の老舗、玉川(ぎょくせん)堂で開かれた「ぐい呑(のみ)製作体験」に参加させてもらった。

 銅板を金鎚(かなづち)で打ち起こしながら立体にするので「鎚起」。江戸後期、仙台出身の職人から燕に製法が伝えられると、近郊の弥彦(やひこ)山で採れる良質な銅にも恵まれ発展した。燕といえばスプーンやフォークなどカトラリー(金属洋食器)製造で国際的に有名だが、鎚起銅器の国内唯一の産地でもある。現在は国内産の銅がないため、チリなど南米産を使っているという。

 まず参加者に配られたのは、直径15センチほどの円形の銅板。「鳥口(とりぐち)」と呼ばれる鉄棒に銅板を当てながら、金槌で叩(たた)いて丸めてゆく。天井の高い畳敷きの作業場に、カーン、コーンと心地よい音が響く。