【書評】『日本人が知らない日本の戦争史』豊田隆雄著 知られざる「20の戦争」を紹介 | 毎日のニュース

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 「最後に日本国が戦ったのはいつ?」と聞かれて、大抵の方は太平洋戦争を思い浮かべるだろう。ポツダム宣言を受諾し、昭和20年8月15日、昭和天皇から日本国民に「終戦の詔勅」が出され、終結を迎えた、あの戦争だ。

 ところが、その3日後に敵国と激闘を繰り広げた部隊がいたことをご存じだろうか?

 名実共に戦争が終わったはずの8月18日未明、突如としてソ連軍が千島列島北端の占守(しゅむしゅ)島に進軍してきたのだ。すでに武装解除を始めていた守備隊だったが、祖国のため、島に残る婦女子のため、力を振り絞ってソ連軍を食い止めた。特に「士魂部隊」と呼ばれた精鋭戦車部隊の奮戦は、敵の心胆を寒からしめた。彼らの活躍がなければ北海道の半分がソ連領になっていた、とまで言われている。しかし現在、それを教える日本史の教科書は見当たらず、当時の様子を伝えるのは現地の草原で朽ち果てた戦車だけだ。

 この戦いだけではない。日本人は有史以来、わが国がくぐり抜けてきた戦火に、あまりにも無知なのではなかろうか? 現役の高校教師として日本史を教える著者は、そんな現状を憂い、筆をとった。本書では「占守島の戦い」はもちろん、初めて大陸からの外敵を退けた戦い「刀伊(とい)の入寇」や、韓国とただ一度、単独で交戦した「応永の外寇」など、知られざる20の戦争について詳細に紹介している。「日本の防衛」に関する議論が盛んな今、本書を通じ、祖国を守るため戦い、死んでいった名もなき人々に思いを馳(は)せてみてはいかがだろうか。(彩図社・1260円)

 彩図社編集部 吉本竜太郎