10日早朝、米サンフランシスコ市で全米ビジネス協会の年次総会が開かれていた。壇上に登場したのは、米大統領経済諮問委員会(CEA)メンバーで経済学者のジェームズ・ストック氏。「金融危機5年後の経済回復」をテーマに講演した。
だが、ストック氏は「回復ペースは期待したほどは芳しくない」と話し、中身は控えめだった。就業人口の高齢化という構造問題もあるが、企業は手元流動性を積み上げたままで、マネーが経済の末端にまで回っていないからだ。
融資や投資など民間への信用供与額は2012年で米国内総生産(GDP)の190%。危機発生前だった07年の213%はもちろん、09年の205%、10年の201%からも漸減している。米ウォール街の金融仲介機能が復活しきれていない証拠だ。
これに対して、金融ビジネスの分野で存在感を増しているのが政府や州だ。
リーマン・ブラザーズは政府支援がないまま破綻したために、金融機関が相互不信に陥り、銀行間取引市場では取り付け騒ぎが発生した。リーマンに続き、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)や複数の地銀大手が事実上破綻し、信用不安が信用不安を呼んで連鎖破綻につながるシステミックリスクが顕在化した。
反省した米政府は金融安定監督評議会(FSOC)を設置し、金融システムの中枢を担う金融機関の支払い能力や財務内容を定期的にチェックする仕組みを作り上げた。加えて、消費者保護庁を設置し、金融機関の報酬体系を規制するなど箸の上げ下ろしまで介入するようになった。