宮永愛子展「house」 いつか消えてしまう白い椅子 | 毎日のニュース

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 見る者にワクワク感や夢を与えるのはアートの重要な役割だろう。そんな展覧会が東京・飯田橋のギャラリーで開かれている。作者はナフタリンを使って表現する京都在住の美術家、宮永愛子(昭和49年、京都市生まれ)。昨年、大阪の国立国際美術館で開催された個展以来のまとまった発表となる。

 展示されているのは近作、新作含め7点で今回もナフタリンを使った作品だ。目をひくのは「house-waiting for awakening」というタイトルの白い椅子が封じ込められている作品だ。椅子はナフタリンから成り、透明な樹脂の中に封じ込められた。高さは1メートルを超え、重さは500キロにもなるという。樹脂の箱には1カ所に小さな穴が開けられ、テープでふさがれている。テープをはがせば、中の椅子が徐々に消えていく仕組み。すっかりと消えてなくなるのはいつのことになるのか。雲散霧消したときには、椅子の抜け殻となった空間が存在するだけ。

 今回はナフタリンのハイヒールやバレエシューズが封じ込められた小品もある。これらも1カ所に穴が開けられ、テープで止められている。テープがとられてしまえば、何十年か後に見たときには違ったものになっているのだ。時間の経過も作品の重要な構成要素となっている。

 美術館であれ個人であれ作品を手に入れた者は、長い年月を通して変化する様をみることができる。なんとも夢がある。(渋沢和彦)

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 8月3日まで(日月祝休)、東京都新宿区市谷田町3の13、ミヅマアートギャラリー。(電)03・3268・2500。