警視庁などの合同捜査本部は三ケ尻久美子容疑者ら2人を前回と同じ特定商品預託法違反容疑で再逮捕した。7万3千人から4300億円を集めて経営破綻した前代未聞の「和牛商法」に対し、最終的に詐欺罪の適用を見据えるが、越えるべきハードルは低くない。
同法違反罪の罰則は2年以下の懲役か100万円以下の罰金だが、詐欺罪では最高刑が懲役10年となる。捜査幹部は「これだけ多くの被害者が出た事件。より重い量刑で立件したい」と意気込む。
2度の逮捕容疑では、破綻前に牛の数が大幅に足りないことを隠し、出資者からカネを募ったことを悪質だと判断された。ただ、こうした「詐欺的行為」を詐欺罪で立件するには、旧経営陣に顧客をだます「明確な犯意」があったことを証明しなければならない。
弁護士によると、三ケ尻容疑者は「牛が足りないことは知っていた」と起訴事実を認める供述をしているが、「だますつもりはなかった」と詐欺の犯意を否定しているという。
しかし、破綻の数カ月前には出資者への配当が滞るなど経営が行き詰まっており、合同捜査本部は三ケ尻容疑者らがこの時期に出資金を集めていたのは「確信犯」だったとみて詰めの捜査を進めている。