鉄玉子って知ってます?


最近は家庭で鉄鍋や鉄フライパンを使わないために、鉄分不足が深刻になっているとも言われています。


ひじきが「鉄分の王様」と呼ばれていた時期があったんですが、ある時急にひじきに含まれる鉄分が1/9に激減してしまった事件が起きました。日本食品標準成分表でのことだったんですが、原因はひじきを茹でる釜にあったのです。


ひじきを茹でる下処理用の釜を鉄釜からスレンレス釜に変えたのが原因でした。乾燥ひじきに含まれていた鉄分のほとんどは茹でた鉄釜から溶け出た鉄だったのです。


普段から鉄鍋を使えば鉄分が摂れそうですが、鉄鍋やフライパンって手入れが大変そうなイメージがありますよね。洗剤で洗えないとか、すぐ錆びるとか。


IHで使えない問題もありますし。


で、冒頭の鉄玉子。南部鉄でできた鉄の物体を家庭用の鍋や炊飯器などに入れて使うらしいんですが、ビジュアルがコチラ。


そしてコチラ。



うん、男心くすぐりますよ、コレは。アンモナイトは本物の化石から型を取ったとか。


価格は2,000円〜2,500円くらい。メッチャ欲しいけど、これって効果あるんでしょうか?

調べてみると、鉄鍋でお湯を沸かしてお茶を淹れた場合、1日の鉄分摂取量を摂るには500杯のお茶を飲まなくてはならないらしいです。

鉄鍋でそれならば、鉄玉子ではどう考えてもそれ以上でしょう。

無理です。鉄分供給源にはなりませんw

ただの鉄のオブジェに2,500円を払えるかということですね。あ、文鎮にもなりますw

今回は見送りで。


鉄は生物にとって非常に重要で、酸素を運んだり、エネルギーを生み出す呼吸において無くてはならないミネラルです。

以前、「生命進化のシンギュラリティ」において、酸素を利用してエネルギー産生を行えるようになったから高度な生物に進化できたと解説しました。



この進化において重要な役割を果たしたのが鉄です。


進化により、鉄がないと生命活動ができなくなったため、海中の鉄分が枯渇してくると、生物は鉄を求めて陸に上陸していきます。


そして陸上の大地に含まれる鉄と酸素を利用することで、植物や動物は大繁殖していったのです。


生命にとって鉄は非常に重要なミネラルではあるんですが、そのほとんどが再利用できるので、1日に摂取する必要がある鉄分は微量です。


しかもミネラルでは珍しく過剰摂取の心配がないとされています。


あれ? おかしいですよね。鉄の過剰摂取はしょっちゅう問題になっていますし。


カラクリはサプリメントの進化にあります。ヘム鉄や非ヘム鉄など自然界にある形の鉄は、摂取すると十二指腸の膜に取りつきます。肝臓は鉄が足りない場合は鉄を取り込む指令を出します。足りている場合は指令が出ず、やがて腸の膜ごと剥がれ落ちて便として排出されます。


ですので、鉄が過剰に取り込まれることは無いのです。


しかしここで現れたのがキレート鉄です。吸収性を上げるためにアミノ酸でキレート(挟み込み)された鉄で、コレは鉄と認識されずにアミノ酸としてスイスイ小腸で吸収されてしまうのです。


血中でアミノ酸と分解されて全身に鉄が送り込まれます。管理された量ならいいんですが、アミノ酸は吸収率が高いので、血中の鉄濃度が過剰になることが多いのです。


コレが問題になっている鉄過剰症です。


通常フェリチン値は男性250以下、女性100以下が正常ですが、海外ブランドの鉄剤を摂取している人は1,000を超えてしまう人も結構いるらしいです。明らかな異常値です。




以上のことから、キレートされていない鉄は食物やサプリメントから管理された量で摂取するなら安全です。そしてビタミンCを同時に摂取すると、体内での還元がスムーズになるため吸収性が上がります。


ただし非キレート鉄でも過剰摂取はやはり厳禁です。ニトロソ化合物を生成し、腸管などのガンのリスクが上がりますので注意しましょう。


また腸内にピロリ菌がいる場合は鉄の吸収が阻害されますし、腸内環境が悪玉菌優位でも吸収が悪くなります。


これらも腸内に不要な鉄が増えて、ガンのリスクが上がる原因となりますので、ピロリ菌の除菌や腸内環境の改善を行なう必要があります。


問題はキレート鉄を摂取する場合です。量の管理をしっかり行い、定期的にフェリチン値をチェックするようにしましょう。海外の鉄サプリメントはほとんど全てキレート鉄です。注意してください。


キレートってすごい技術で、マグネシウムやコエンザイムQ10などでも使われていますよね。「高吸収タイプ」ってやつです。


しかし、キレートを使うなら量の管理は慎重にしなくてはならないのは同じです。吸収性が高いので、キレートされていないものの量と比較してはいけません。3倍吸収性が良いなら、摂取量は1/3にするなどの工夫が必要になります。注意していきましょう。


ではでは。