楫取素彦の五言絶句の書幅を入手した。
群馬県令の楫取が群馬県中学校(現、前橋高校)を視察した時、自分の気持ちを詩に詠じたものである。
日本の近代教育史的にも非常に貴重な詩幅と言えよう。
一部翻字不明のところがあったが、畑野孝雄氏にご教示をいただいた。
校庠新卜地 校庠 新たに地を卜し
牗戸向陽明 牖戸 陽明に向かふ
*下平八庚
抵小暮村視中学校書意 哲
(小暮村に抵りて中学校を視、意を書す)
○牖 窓。牗は異体字。
○哲 素彦の諱は希哲。
新たに用地を選定して学校を建てた。
その窓は、太陽に向かって開いている。
勉学のために故郷を離れて学ぶ者らが、
焦らず励んで成功することを期待する。
注 群馬県中学校。現、群馬県立前橋高等学校。同校は明治十五年一月、旧前橋城内から南勢多郡小暮村へ移転した。
群馬県令や政府高官を歴任した楫取素彦は、安積艮斎の門人。嘉永三年四月二十一日入門。当時の名は小田村伊之助である。吉田松陰の次妹・寿を娶り、寿亡き後、久坂玄瑞の未亡人・松陰の末妹・美和子(文)を娶った。