「苗湖分溝八図横巻」安積疏水八景の絵巻で、安積国造神社の社宝です。

 

いわきの儒学者大須賀筠軒の画・漢詩と、仙台の儒学者岡鹿門の漢詩がかかれています。

二人とも安積艮斎の門人です。

 

7月10日の講演会のとき、久しぶりに展示しました。

絹本に描かれたもので、劣化しているため、1日のみの展示となりました。

 

竣工したばかりの安積疏水の風景を一流の文人が描いたものなので、大変貴重です。

 

今の安積疏水は戦後改修されましたので、昔の姿をとどめていません。

だから安積疏水は、有形文化財の指定を受けることはできないのです。

 

筠軒の画を紹介します。

 

猪苗代町にある十六橋水門

風情のある水門でした。

日橋川にあって、猪苗代湖の水面の高さを調整しています。

旧来湖水を利用してきた会津の農民と、安積の農民とが、両方で湖水が使えるようにするための工夫です。

これを考案したのがオランダ人のファン・ドールンです。

 

山潟の取水口

今は上戸に取水口がありますが、かつては、山潟にありました。

蒸気船も描かれています。磐越西線開通前に存在した交通機関です。

 

田子沼

疏水が田子沼を通ることで、工事費を節約しました。

ここから疏水は山中に入ります。

水路の地中トンネル工事で、固い岩盤を壊すときは、ダイナマイトを使いました。

 

沼上の瀑布

沼上山の中腹から、疏水が瀑布となって落下します。

凄い光景だったと思います。

この水は、一旦五百川に合流します。

今、沼上発電所があります。

 

玉川の堰

玉川村に石積みの堰を築きました。

ここで五百川から取水し、東へと流れます。

 

熱海疏水橋

五百川の上を疏水(橋)が通ります。

今はただの鉄管です。

 

疏水舟行

当時は疏水を舟で下ることもできました。

 

麓山公園瀑布

麓山公園です。

疏水の分水が滝となって流れ落ちました。

ここに使用された石は、奥州街郡山宿の木戸門の石です。

国の役人が来たときに、この滝を見て、

「国の事業の安積疏水で滝見見物とはなにごとだ」と怒りました。

 

時代がくだり、疏水の水が来なくなって滝は枯れましたが、改修工事で滝が再現されました。

 

ウィキペディアに、

「1991年、埋もれていた滝が復元され、滝見台が整備される」

とありますが、埋もれていたわけではなく、滝の地形は残っていました。

改修でむしろ埋められてしまい、滝の落差は小さくなりました。

 

今の滝の水は、疏水を落下させているわけではありません。

電力で水を循環させているのです。

この人工の滝は、かなりの水量がありますから、電力を随分無駄に消費しています。

限りある資源は大切に使いたいものです。

庶民の血税が使われていると思うと、落ち着いて滝を見る気分にもなれません。

また、滝見台を新たにつくったことで、昔の景観とはほど遠くなりました。