江戸時代の儒学には、次の三つの潮流があります。

 

朱子学

真理を哲学的実践的に探究する。 人間の心は性と情から成り立ち、情に動かされずに性に従って生きることが理に即する。性即理

 

陽明学

心即理。知行合一。主体性尊重。道は天下の公道なり。平等思想。

 

考証学

古典を厳格に考証。清代考証学 江戸考証学

 

儒学は、今の言葉で言えば、政治哲学・社会科学・実践思想・実学です。 

儒学者は幕政や藩政のブレインの役割を果たしました。

余技として漢詩を作りましたが、政治批判の詩もあります。

 

いわきの儒学者展は、

 

いわきの五儒 神林復所・室桜関・神林惺斎・大須賀筠軒・吉田景雲

 

の書幅画幅がメインです。

 

15種の書幅の翻字・訓読・現代語訳は完了し、図録としてまとめました。

入場料500円の中に、図録代も含まれております。

 

五儒の師友門人を示します。

 

神林復所 1795生まれ 

師……佐藤一斎 林述斎

友……安積艮斎(二本松藩儒、幕府儒官) 大槻磐渓(仙台藩儒)

門人…室桜関 神林惺斎 大須賀筠軒

 

室 桜関 1818生まれ 

師……神林復所 会沢正志斎 古賀侗庵 尾藤水竹 斎藤拙堂 広瀬旭荘 藤森弘庵

門人…吉田景雲 数百人

 

神林惺斎 1832生まれ 

師……神林復所 安積艮斎 奥野小山 梁川星巌

弟……大須賀筠軒 先輩…大槻磐渓 堀江半峯(二本松藩儒・福島)

友……岡鹿門

門人…天田愚庵 

 

大須賀筠軒 1841生まれ 

師…神林復所 林復斎 安積艮斎 塩谷宕陰

兄……神林惺斎  先輩…大槻磐渓・堀江半峯  友…岡鹿門

 

吉田景雲 1843生まれ 

師……室桜関 林学斎(復斎の次男) 塩谷宕陰 大槻磐渓

門人…千余人 いわきの近代教育の祖

 

以上となります。

 

五儒と艮斎は、関係が深いです。

 

安積艮斎 1791生まれ 

師……佐藤一斎(陽朱陰王) 林述斎(朱子学・考証学)

友……林檉宇 林復斎 神林復所 古賀侗庵 斎藤拙堂 大槻磐渓

門人神林惺斎 大須賀筠軒 林壮軒 堀江半峯 小栗上野介 岡鹿門(仙台藩儒)

      秋月悌次郎(会津藩儒) 三千人

 

そして神林復所と室桜関がブレインをつとめた安藤公。

 

安藤信正 1820年生まれ

1860年老中 開明派 井伊直弼の強硬路線を否定 公武合体

長州藩士長井雅楽(艮斎の門人)の『航海遠略策』を承認

金貨流出問題・物価高騰問題の防止 坂下門外の変(水戸藩士のテロ)

 

安藤信正公は、阿部正弘や堀田正睦の流れの、開明派老中でした。

そして、公の治世の道を考えたのが、いわきの儒学者でした。

 

しかし、尊王攘夷運動が激しく、公は志を全うすることができませんでした。

 

その後の歴史を見ますと、安藤公の失脚は、あまりにも大きな損失であったと思います。