「天玄地黄」という言葉がある。

空は黒く、地は黄の色だという。

 

空は青いという固定観念があるので、「あれっ」と思う言葉である。

 

『易經』「坤」に、「陰疑於陽必「戰」,為其嫌於无陽也,故稱「龍」焉。猶未離其類也,故稱「血」焉。夫「玄黄」者、天地之雜也。天玄而地黄」という。

 

ちなみに、この易経の語は、岩波文庫の訳によれば、

「陰の勢いが盛んになって陽とまぎらわしくなれば、必然的に陰と陽とは相い戦うことになる。陰の勢いが盛んで、まるで陽が存在しないのではないかと疑われるほどだから、陽の象徴である竜という呼びかたを用いるが、やはりまだ陰の類を離れることはできないから、血といい、おたがいに傷つけあうという意味で血を流すと言ったのである。竜は陽の象であり、血は陰の類である。流れ出す血が玄黄だというのは、天と地の色がまじりあうことである。天の色が玄(黒)で地の色が黄である」という。

 

空は黒い。

 

言われて見ればあたりまえのことなのだ。

空が青いのは、太陽光と大気中の微粒子の作用である。空自体の色ではない。

 

そうなると、むしろ、空は黒いと言った方が、空の本質を見ていることになる。

 

中国古代文明が栄えた中国北部は黄土だから、地は黄。

 

天地玄黄、空は黒かった。