令和で梅がはやっていることにあやかって、一斎の梅の詩を紹介する。

詩は、郡山市在住の某氏所蔵の書幅写真にもとづく。恥ずかしながら、5年前に翻字をこころみて挫折したのだが、過日ひさしぶりに見たら、なんと読めたのである。

さらに訓読と口訳を作って、知人にメールで送ったところ、的を射た評語を頂戴した。それも末尾に付した。

題画梅(画梅に題す)   佐藤一斎

幾年銕幹凌寒雪  幾年か鉄幹 寒雪を凌ぐ
数點瓊葩吐古香  数点の瓊葩(けいは) 古香(ここう)を吐く
論暎毋間桃与李  映ゆるを論じて間(ひま)毋(な)し 桃と李と
徒独妖艶媚春陽  徒だ独り妖艶 春陽に媚ぶ
      *下平七陽

○瓊葩 玉のようにうるわしい花。 

くろがねのような幹は、寒雪をしのいで幾年になるのか。
いくつかの玉のような花が、古めかしい香を吐く。
桃と李は、どちらが春の日ざしに映えるかを論じ合って、閑(ひま)もないようだ。
ただひとり、妖艶な梅が春の日ざしに媚びている。

七言絶句、起承句は対句を成しているので押韻せず、承結句で押韻(香、陽)する。題は梅だが詩中に「梅」無く「桃李」のみというつくり。素晴らしい。―長谷川隆氏(漢詩作者)

転句での桃李の争いと結句の梅の佇まいが印象的―岡真氏(岡鹿門のご子孫)