前回のブログにて「周りを見る練習はしていますか」とのコメントをいただきました。
今回、私が周りを見るということについて考えていることを書きたいと思います。
今、スペインなどを中心にして、ヨーロッパでは以下のようなプレーモデルが重視されているようです。
1.認知。(局面を見ること)
2.理解。(今どういう局面なのか、局面の本質を理解すること)
3.判断。(局面の本質を掴み、プレーを選択すること)
4.実行。(プレーの実行)
当然ながら、段階があります。
まず周りが見えていなければ、局面の理解をしようがありません。
そしてジュニア年代はサッカーの入り口ですので、まず認知をできることが重要になります。
私としては局面の理解は、中学生以降でもいいのではないかと思っています。まずはとにかく視野に多くの情報を入れる力を伸ばすべきだと思うのです。
私はそういった点、元FCバルセロナスクールコーチの松村さんの意見が素晴らしいと考え、採用しています。
『カオスとフラクタル理論』です。
非常に簡単に書けば、その局面に集中できる状況で練習するのではなく、周りに「ノイズ」がある状態で練習するということです。
松村さんが提唱している練習や、自身で考案したものを、思いつくまま書いてみたいと思います。
1.ドリブル鬼ごっこ。
これは松村さんが、バルセロナ時代にやっていたようです。
2人1組で複数組がコートに入ります。その2人でドリブルしながら鬼ごっこをします。
これをやると、コート内にカオスな状況が生まれます。常に周りを把握してドリブルしないと、すぐぶつかってしまうのです。自然と周りを見て、状況を認知する力が向上します。
2.鬼ごっこ全般。
私がよくやるのが「手つなぎ鬼」と「コーン鬼」です。
手つなぎ鬼は、手をつないで追いかけますが、4人になったら2人2人に分裂します。最初は鬼が1人の状況から、どんどん鬼が増えてきて、状況が変わってきます。当然、目まぐるしく変わる状況を見ることになります。
コーン鬼は、コーンにいる人をタッチできないというものです。ですが他の人がコーンに来たら、元々コーンにいた人はどかなくてはなりません。これも、よく周りをみないとうまくいきません。
3.複数組が入る1対1。
1コート1組で1対1をやるのではなくて、複数組でやります。これも松村さんが提唱しているものです。
私は「違う組にぶつかったりボールが当たったら、相手ボール」というルールをよくいれます。
さらに設定として、大きな六角形のコートを作り、その中で複数組1対1をします。六角形のどこかの辺がゴールなのですが、それも1対1をやる当人に決めさせます。つまりごちゃごちゃした中で、毎回ゴールが違うので、当然周りを把握をするようになります。
4.六角形で3対1、もしくは4対2。
上記した六角形のなかで、複数組が3対1や、4対2を行います。違う組にぶつかったり、違う組にボールをぶつけたら反則で、その人は鬼になります。
ところで私は、練習において、四角形ではなくて六角形のコートをゲーム以外では作るようにしています。
ゲームでさえ六角形のコートにすることがあります。
というのは、私が思うサッカーの陣地取りの優位性は「四角形の角にいかない」ということです。
サッカーで言えばコーナーフラッグ付近はなるべくいかないようにするのです。
考えてみれば当然で、四角形の角は、左右どちらにも行きようがないのです。
たとえばウイングがサイドを突破する際、ドリブルで抜く一歩目のタッチで、ゴール方向に切り込めるかどうかは、その選手が伸びるかどうかの大きな違いになると思っています。
これはここ15年で2人ユース日本代表を輩出している(おそらく3人目がそろそろ選ばれそうです)A監督が試合中にコーチングしているのを見て、印象に残っていることでもあります。
A監督は、ウイングが一直線にコーナーフラッグの方にボールタッチして抜いたプレーを見て「そのタッチじゃ、おまえのサッカー人生終わっちゃうよ」と言いました。
四角形のコートだと、無意識に角にいってしまいます。
ですが六角形ですと、コートを「丸く」使える習慣が身に付きます。
基本原理としては、90度というのは衝突の角度もしくは規格化の角度なので、なるべく使わない方がいいと私は考えています。
対して調和の角度は120度や60度です。
そして六角形の一辺は120度なのです。
胡散臭いと思う方もいるでしょうが(笑)試していただければ、きっと効果が分かるかと思います。
動きがなめらかな感じになってきます。
4.2組が同じコートでミニゲーム。
これまで書いてきたことと思想は同じです。
他の組にボールを当てたら反則で、相手ボールになります。
5.全員にボールを回さないと点をとれない。
ボールを回す際、みんなが全員にボールが回ったか、気にする必要があります。当然、周りを見る習慣が勝手に身に付きます。
6.ボール2つゲームで、味方がもう一方のボールを持っていないと得点できない。
私がこういった『カオスとフラクタル理論』を全面的に採用したのが、教えた2代目でした。
6人しかおらず、5年生の頃には市内最強チームに0対17で負けたチームでした。5年生の頃は文字通り市内最弱でした。
ですが卒業時に2人、関東リーグ所属のクラブチームにセレクションで合格しました。その内の1人は、関東大学リーグ副キャプテンになりました。
さらに3人目は都大会出場チームの高校サッカー部副キャプテン、4人目は同じく都大会出場チームの高校サッカー部のエースです。あと2人も市内の部活レベルですがレギュラーを取りました。
私がサッカーブログを書こうと思ったのは、この2代目の経験が最も大きいのです。
結局は子どもの才能だよ、という人もいます。ですが私は実際、市内最弱からかなり高いレベルでやれる選手を輩出できたのです。さすがに市内最弱から関東大学リーグ副キャプテンということで、私がやったことが寄与していないことはないでしょう。
このときは、バルサが下部組織で取り入れているであろう理論を元にして、自分なりにやったことがハマったのだと思います。そして、この『カオスとフラクタル理論』でやると、まさにバルサっぽい感じになってきます。
状況を常に収集して判断し続ける精密機械みたいな感じです。
次からは、違った要素での周りを見る習慣です。
7.よく足裏タッチとかのボールコーディネーションを最初に練習したりします。
そのときにたとえばコーチがその辺をうろうろ歩きながら「コーチにお尻を見られるな!」と声掛けします。
もしくはボールタッチしながらじゃんけんをします。
8.動き出しの合図は「相手の顔が上った瞬間」。
これは↑10分10秒からの中村憲剛さんの言葉に尽きると思います。
そしてこの習慣化は、非常に大きいと思います。
たびたび書いていますが、私は小4までは徹底的に技術練習をしますが、小5からは根本的に練習を変えるようにしています。
小5からはとにかく認知、判断、決定、実行ばかりです。
たとえば私は「3対1」は小5以降徹底的にやりますが、それは判断のバラエティを入れたものです。
まとめます。
私は「周りを観ろ」という声掛けよりも「周りを観ざるをえない設定の練習をやる」ことが本質だと思っています。
それが上記したような練習だと私は思っています。
なので、コーチがああしろこうしろと声を張り上げている練習は、私は設定がうまくいっていないと思うのです。
私の理想は、コーチは一言もアドバイスしていないが自分の狙いを伝えられる設定の練習を組めることです。
そもそもコーチがやるべき本質は「選手が数ある選択肢を持てるようにして、さらに自分で選択肢を選んで、その善悪を自分で評価できるようにすること」だと私は思っています。
選択肢を数多く持つために、まずは基本技術がなければいけません。
特に細かいプレー選択をできるために必要なのは「ドリブル」です。
そして、習慣として周りを観ることを伸ばさなければいけません。
それは上記したようなことです。
こういった基礎技術と周りを観る習慣がつくと、勝手に自分でプレー選択をして判断するようになります。
そこまでいったら、もうあまりコーチの出る幕はないでしょう。
あとは、ただボーっと試合を眺めていることになります。