カオスとフラクタル理論。 | 徒然に。

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 私は何度も書いている市内最弱の代のとき、バルサの下部組織が取り入れているという話を聞き、カオスとフラクタル理論を取り入れました。

 そしてこれも何度も書いていますが、卒業生6人中、関東リーグ所属に2人セレクションで合格しました。

 そのうちの1人は関東大学リーグ副キャプテンになっています。

 彼らが伸びた要因は、彼らが賢くていい奴ばかりだったからだと思いますが、カオスとフラクタル理論の成果もあったかと思います。

 

 

 簡単に書けば、ある初期設定を与えると、現象は複雑であっても(カオス)、できてくる形は自己相似形を持つということです(フラクタル)。

 私が最もカオスとフラクタル理論を使いこなして練習していたと思うのが、故オシム監督です。

 

 

 たとえば↑動画のオシムさんの練習は、素晴らしすぎると思っています。

 練習で条件を設定します。

 そうすると不思議なことに、同じようなやり方になっていくのです。

 

 小学生のうちは↑のように、複雑すぎる設定は厳しいです。

 ですが、もっと簡単なものからでも、いくらでも設定できます。

 たとえば、私がよくやっていたのは「4対4、全員ボールを回したらシュートしていい」です。

 オフェンス側は最初、全員にボールを回さなくてはいけないので、周りを見るようになります。そして考えるようになります。

 さらに全員にボールが回ったあとは、シュートは打てますがせっかくボールを回したのだから慎重にいきたい気持ちもでます。そしてそのせめぎ合いの中で、判断が磨かれていきます。

 

 ほかには「シュートはダイレクト」もよくやりました。

 そうやると、まさにフラクタル的な現象が生じるようになります。

 誰かがドリブル突破をし始めたら、周りはゴール前に走るようになります。ドリブルしている選手はシュートを打てないのです。

 

 どのチームでも「ボール2つゲーム」は、取り入れることがあるかと思います。

 ここでもカオスとフラクタル理論的なおもしろい設定があります。

 「自チームがボールを保持していないとシュートを打てない」です。

 シュートを打つ瞬間、もう1個のボールがどこにあるかが、大事になってきます。周りを見るようになりますし、声掛けも自然にたくさん出るようになります。

 

 ただ、こういった条件付けをしなくてもシンプルに「カオス的な状況でプレーする」のは、非常に効果があると思います。

 たとえば1対1や3対1をやるのにも、大きなコートで複数組を一気にやります。

 そして「他の組の人やボールに当たったら反則で相手ボール」というルールでやります。

 こういうルールでやると、1対1をやりつつ、周りに目を配るようになるのです。

 

 こういった練習は、非常に見栄えが悪いのです。

 ごちゃごちゃした中で、子どもはやたら一生懸命やっているけど、練習している雰囲気ではありません。

 むしろ鬼ごっこをやっている雰囲気に近いです。

 当時は市内最弱の代で、親御さんでサッカーに熱中している方がいなかったのが、私にとっては幸いしました。

 もちろん無関心というのではなく「子どもが楽しそうにやっていればいい」みたいな感じでした。

 多分強豪チームでこういった練習をやっていたら、私は親御さんに詰められてコーチを辞めさせられていた気もします(笑)。

 それほど、一般的な練習形態とは違った感じになります。

 たとえばミニゲームをやるにも、大きめのコートを作って、2組の対戦を同じコートでやらせます。

 これも「違う組に当てたら反則で相手ボール」です。

 すると、ミニゲームを見ていても、なにがなんだかわからない感じになります。ただカオス的に無秩序がある感じになるのです。

 

 ですが、結局は6年後半には素晴らしいサッカーをする代になりました。

 市内最弱から、驚くべき進化だと思いました。

 カオスとフラクタル理論でやると、判断が異常に速くなります。

 それは当たり前かなと思います。

 普段から、わけのわからない「雑音」があるなかで練習していて、その雑音も気にしなくてはいけないのです。

 周りに気を配るということが、段違いになってきます。

 1つのプレーで受け取る情報量が多くなるのだと思います。

 

 どのコーチも、練習の意図を説明したりすると思います。

 ただ、私はほとんどそういうことはしません。単純な技術練習のときは、もちろん説明しますが。

 高学年になればなるほど、設定を与えるだけです。

 私はこれはオシムさんから学んだことでもあります。

 「考えろ」と言いますが、何も問題もないのに人は考えられません。

 ただ「考えろ」というのは、指導者の自己満足な気もします。

 本当に選手に考えさせたいのならば、条件を与えなければいけないと思います。

 「シュートはダイレクト」という条件を与えれば、選手たちは考えるでしょう。

 「どうやったらダイレクトでシュートを打てるだろう」

 自然とチャンスになれば、ゴール前に走りこむようになります。

 そしてオシムさんは、その条件設定を無数に持っていたから偉大だったのだと思います。