元プロはやっぱりうまい。 | 徒然に。

徒然に。

思ったことを気ままに。

 市内で昔からお世話になっているチーム出身の子で、JリーガーになったM君が先日引退した。

 元U18、U19日本代表で、U19日本代表では主将も務めた。J1の某チームでレギュラーを取り、J1出場は100試合以上。日本代表には惜しくも届かなかったが、日本のトップで長く活躍した選手だった。

 それでM君が今週からサッカースクールを始めるということで、見に行った。

 

 フットサルコートでのスクール。

 見に行くと、そのお世話になっているチームのA監督もいた。

 話しかけたら「おお!見に来たのかよ!」と寄ってくる。

 私は少年サッカーの師匠だと思っている方が2人いて、そのうちの一人がこのA監督だ。もう一人はM監督。こちらも市内の普通のチームから、毎年のようにFC東京ジュニアユースに選手を送り込んでいる伝説的な監督だ。

 U18日本代表で、そのM監督のチーム出身の子Y君と、A監督のチーム出身のM君がダブルボランチを組んでいるのを見たときはおったまげた(笑)。

 メンバーが揃わないときは、市内でも最下位に近い成績のときがあるような普通のチームで卒業まで頑張った子が、日本代表のダブルボランチとは!

 この両監督の素質がある子は必ず育て上げる手腕は、本当にすごいと思う。

 

 この両監督に共通するのは「サッカーマニア」だということだ(笑)。

 私もサッカーマニア度では負けていないと思っているから、きっとこの両監督はそれをわかってくれていて、私を可愛がってくれるのだろうと勝手に思っている。

 普通、他所のチームのサッカーコーチと試合会場で会って話すとしても、専門的なサッカーの話は大してしないだろう。

 だがこの両監督は違う。

 

 M監督。

 今回U12リーグで同じブロックになったので、先週の土曜のリーグでは試合会場が一緒だった。

 今M監督は60歳を過ぎて、総監督的な感じで、現場の試合の指揮は違うコーチに任せているので、私を見かけると寄ってくる。

 そして当たり障りのない会話をすることなく、最初からいきなりサッカーの専門的な話を始めるのだ(笑)。

 「ワンツーは縦のワンツーと横のワンツーじゃ違うじゃん、横ワンツーはあれ意味ないよな」とかいきなり言ってくる。

 私もサッカーマニアでは負けてないので「でもMさん、縦にパスコースあるとするじゃないですか、そこはドリブルのコースじゃないんですか、そこはどう判断するんですか」と逆質問する。

 するとM監督「そこのコースはボールが通ればいいんじゃねえの、ドリブルとかパスとかプレー選択の種類じゃなくて」と返してくる。

 延々とこういった会話が続いて、気づけば30分が過ぎていた(笑)。

 

 A監督。

 M君のサッカースクールのフットサル会場で会うと、最初からサッカーの専門的な話をふっかけてくる。

「今回アジアカップで準優勝したU23日本代表と、フル代表はやってることは変わらないよな。ただ全然トラップの質、パススピードが違うんだよ。それで小学生では無理気味にでもパススピードを上げるんだよ。小学生だと身体ができてないから、足が速いパスの衝撃に負けて、勝手にスポンジトラップになる。それがいいんだよ。子どもの頃から速いパスを常に出すことで、いいトラップが養われると俺は思うね」

 A監督は自分で語るスタイルなので、たまに茶々を入れながら、聞き役に徹する。

 そしてこちらもスクールの1時間、延々とサッカーの専門的なことをA監督が話し続けたのだった(笑)。

 

 そんな感じで、お会いするたびに熱くサッカーについて語り、語りだすと止まらないのだ。

 そして私は、この両監督のサッカーに対する見方は超一流だと思っている。

 私はけっこうまじで、この両監督はプレミアリーグの監督も務まるんじゃないかなと思う。

 そして情熱を持ち続けているからこそ、この両監督は素晴らしい選手たちを送り出していると私は思う。

 

 話を戻してスクール。

 最初から「今回は技術練習しかしない」と告知していたようで、1時間延々と技術練習をしていた。

 重視してやっていたのは↓岡田メソッド的な、今では日本中どのチームもやっているようなパス練習だった。

 

 

 ただ、私としては「サッカースクール」として、それなりに高いお金をいただく価値が十分あるなと思ったのが、M君も一緒に子どもたちに混じってやっていたことだ。

 とにかくM君はうまかった。

 インサイドキック一つとってもM君があまりに上手くて、唸ってしまった。

 私とて元三菱養和巣鴨で東京トレセンまでいった人間だ。養和巣鴨の一代上は全国優勝していてプロに4人入ったし、2代上には元日本代表の永井雄一郎さんがいて、毎日トレーニングで見ていたし、一緒にトレーニングしていた。

 ただ、私の見るところ、インサイドキックとかトラップに関しては、永井さんよりもM君の方がうまいと思った。

 まあ永井さんはドリブラーでM君はボランチが本職ということもあるから、特徴が違うのもあるけど、それにしてもうまい。うますぎる。

 そしてスクールでM君が一緒にプレーするという、ただそれだけで、高いお金を払っても(普通の少年団に比べれば高いという話で、一般的なスクールと同じくらいの値段)このスクールの価値があるのではないかなと思った。

 「本物」に触れることが、上達への近道だろうと思う。

 

 今日見に行ったフットサルコート会場は二面あった。

 奥でもスクールが練習していて、こちらは人数が20人くらい。M君のスクールは今回が初回ということで、中学年低学年合わせて10人ちょっと。それも時間で分けてやっていたので、私が見た高学年のスクールは5人くらいだった。

 一緒に見に行った我がチームの教え子で(というか彼に見に行こうと誘われたから見に行った)、今一緒にコーチをやってくれているW君(よくこのブログに登場するけど、元関東大学リーグキャプテンまでいった)が奥のスクールの練習を見ていてつぶやく。

 「ねえ〇〇さん(私の名前)見てると奥のスクール、最初にアジリティやって、あと試合しているだけですよ、スクールに行く意味あるんすかね」と痛烈なことを仰る。

 この言葉を聞いていたA監督、大笑いしながら「まあそうはいっても、なかなか突き詰めてやるのは難しいから」と言う。私も「スクールならではの練習って、結構むずかしいですよね。そんなにユニークな練習がたくさんあるわけでもないですし」と言う。

 それでA監督「Mは自分からプレゼンするのがまだ苦手なんだよな。そこは言ってるんだけど。スクールやるなら親相手に言葉でちゃんと語れないとけっこうきつくなるよと」と言う。私は茶々を入れて「それA監督がM君が小学生時代に教えてないからじゃないですか」と言った。

 なぜかA監督嬉しそう。ツッコミを入れられると喜ぶのは、昔からのA監督の傾向ということは、私は20年前から知っているのだった(笑)。

 

 スクールは難しいと思う。

 私は昔はバリバリのスクール反対派だったけど、最近はそうでもなくなってきた。

 昔は自分のチームの練習がないときは、自主練するか自分のチームの子と誘い合わせてサッカーをするのが理想的だと思っていた。

 今でもそう思っているけど、もうそういう時代ではなくなってきた。

 私は、時代が変わったのに、自分の信念を貫き通すといった野暮なことはしたくない派だ。

 ある人が言ったが「サッカーは習い事だということを受け入れる」。

 今はそういった時代なのだろう。

 だからスクールも全然ありだと思うようになった。

 ただ、W君が言ったように、奥のコートでやっていたスクールならば、チーム練習だけでいいと思った。むしろ普通の少年団でやっているよりも、専門性が少ないようにすら思った。コーチが一緒にプレーして技術を見せるわけでもない。

 スクールコーチがめちゃくちゃうまくて、そのコーチと一緒にプレーするだけで、子どものレベルが上がるスクールは意味があるんじゃないかなと思った。

 ただこういったスクールは親御さんがサッカーをある程度わかっていないと厳しいかもしれない。

 それはM君のスクール練習を見ていたときの我々の会話でもわかるだろう。

 上記した岡田メソッドみたいなパス回しの練習のとき。

 M君はめちゃくちゃきれいなインサイドキックで、小学生には厳しいくらいの速いパスを入れる。

 それを見ていたW君「こういうのが本質なのに、たぶんサッカーわかってない親は、単純な練習ばかりでこのスクール意味ないとか思うんでしょうかね」と私に聞いてくる。

 本日はW君、やたら痛烈なことばかり仰る(笑)。

 W君、嫌なことあった?相談乗るよ?

 そうしたらA監督「いくら派手なテクニックやっても、そんなの三笘とかそのレベルにいった選手だけだよな。本質は止める蹴る、あと判断。だからMにはこうやって本質的なことをおまえがいくら大事だと思ってやっていても、ちゃんとそれ親とか子どもに説明しないとわかってもらえないよと言ってるんだけどな」と言う。

 確かにそのとおりだ。

 M君が真面目な人なだけに、スクールでうまくやるのは難しいんだなと思った。

 

 スクール終了。

 M君と話す機会を得られた。

 W君はM君の1代下だが、しょっちゅう練習試合をしてしのぎを削った中だ。

 そしてM君はW君の一代上のうちのチームのキャプテンと小学校が同じで、今でもよく飲みに行くらしい。

 それでその一代上のキャプテンの話をするとM君「あ、W?わかるよ!」と言って「今度飲みに行くか!」となった。

 そして私も当然の如く連絡先を交換して、M君に「今度ぜひうちのチームに練習きてほしいんだけどいいかな」と聞いてみる。

 するとM君「ぜひ行きたいですね!」と言ってくれた。

 私は「謝礼はいくらくらい、、、」と聞きかけるとA監督が悪ノリしてくる。「ああ、謝礼は俺の口座に入れて!もしMに頼むなら、俺を通してくれよ!」

 私は真面目な話をしているのに、まったくA監督の悪ノリも困ったものである(笑)。

 だが本当に収穫があった。最高の収穫だ。

 今後我がチームに、M君が定期的に来て指導してくれることになりそうだ。

 そのプレーを見るだけで、子どもたちは飛躍的に変わるだろうと思う。

 

 私はコーチとして、恵まれていると思う。

 なぜかといえば、大学生で何の気もなしに始めた普通の市内のチームのサッカーコーチで、その頃指導していたキャプテンのW君はプロ一歩手前の関東大学リーグキャプテンにまでなった。

 さらに当時の監督同士が仲が良くて、しょっちゅう練習試合をしたり合同練習までしてくれたチーム(M監督のチームで、そのときは大学生の私に「おまえが全部練習仕切ってやれ」と言われ、緊張で震えながら指導したのは懐かしい思い出。そのときに私はのちのU18日本代表選手を指導していたわけだ笑)もあり、そしてその両チームのU18日本代表にまでなった子の少年時代を、見ることができた。

 

 私が思うのは2点だ。

 まずは「信念を持った指導者に指導された子どもは伸びる」ということだ。

 私は弱いチームにいようが、もしそのチームのコーチが、サッカーについて一晩中でも語れそうなら、そのチームの子は伸びると思う。

 ただ精神論とかはだめだろう。

 そうじゃなくて専門的な技術論だ。

 

 2点目は「コーチが下手な子に対しても優しい視点を持っているか」だ。

 この点、両監督とも優しいのだ。

 下手な子に対して、決してやめさせるようなことはしない。

 私は自身の地域で、下手な子を追い込んで強制的にやめさせるようなことをして成り上がったチームを見てきた。

 だが弱い代だろうが関係なく一生懸命やる両監督のチームから、素晴らしい選手が出てきている。

 今日M君と話したが、全然「俺元Jリーガーだし」というのが感じられない。

 私はそういうのが大好きなのだ。

 でもそういう「俺すごいんだよね」というオーラが全然ないから、スクールをやるときに人集めで苦労するんじゃないかなと、老婆心ながら心配になった。

 この辺が両立しないから、人生は難しいと思う。

 私はM君が大好きになってしまった。本当に普通の人なのだ。

 A監督が「Mにおまえのチームの練習頼むときは俺の口座に入金しろ」とか冗談で言っているときM君は「またA監督、だめですよーそんなこと言っちゃ」とか普通に言っている。

 ものすごくまともで素敵な人だなと思った。

 それはM君が小学時代A監督のような人に、純粋でサッカーバカで本当に素敵な方に、育てられたからだと私は思っている。