平成22年4月1日(1年後の)改正労働基準法のポイントQ&A | Akko☆女性社労士~徒然日記

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妊娠中に離婚して早くも23年。28歳、産後4ヶ月から勉強を始め、社労士と行政書士の資格を取って就職→2006年に独立開業,現在17年目。

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平成22年4月1日から実施される、改正労働基準法。ちょっと早いですが…

目    的 …長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と家庭生活の調和を図ること

大きな変更点…時間外労働の割増率の変更と、有給休暇が時間単位で取得できるようになる。

Q&A

Q、時間外労働の割増率の変更について教えてください。会社の負担が大きくなるのでしょうか。

A、1ヶ月に60時間を超える時間外労働は、法定割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられます。例えば、時給換算で残業単価が2,000円の社員でしたら、月の時間外労働時間の合計が60時間までは2,500円です。(これまでと同じ25%の割増率だからです)
ところが、60時間を超えると1時間当たり3,000円の残業代を支払わないとなりません。(50%の割増だからです)月の時間外労働が60時間以内に収まっている会社は負担が増えることはありませんが、60時間を超えている会社は、時間外労働の賃金支払の負担が大きくなります。

Q、夜の10時以後の深夜労働も割増率が上げられたのでしょうか。

A、いいえ、深夜労働や休日労働の割増率の変更ありません。これまでどおり、深夜労働は25%、休日労働は35%の割増率になります。ただ、60時間を超えている者に深夜労働をさせると、深夜残業と扱われますので、割増率が75%になります。(50%と25%の合計で、75%になるからです。)例えば、2,000円の残業単価の者ですと、3,500円になります。このような状況から、ワークシェアリングの提案が出ています。個人に時間外労働が集中することを防いで、複数の人間が仕事を分かちあうという考え方です。

Q、当社は社員の時間外労働は60時間を超えています。会社の負担が大きくなります。何らかの猶予措置はありませんか。

A、中小企業には猶予措置があります。
サービス業のケースでは、資本金の額または出資の総額が5000万円以下、または、常時使用する労働者数が100人以下なら、この50%以上の割増率の適用はありません。(社員数は店舗単位でなく、会社単位で判断されます)しかし、3年後には改めて中小企業も対象とするかどうか検討することが法律に明記されています。中小企業の猶予措置がなくなるケースも想定されています。

Q、当社は資本金が1億円なので、この法律の適用対象となります。やはり、50%の割増率の支払は大変です。免除にはなりませんか。

A、賃金の支払でなくても良い方法も定められています。労使協定を締結すれば、1ヶ月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、改正法による引き上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に代えて、有給休暇を付与することができます。例えば、1ヶ月に76時間の時間外労働時間だとすると、60時間を超えているのは16時間になります。この16時間の25%は4時間になりますので、賃金の支払に換えて4時間分の有給休暇を与えれば良いということになります。
ただし、76時間分の25%の割増賃金の支払いは必要です。(50%の割増分のすべてを有給休暇で取得させることはできません。)詳細は改正法の施行までに厚生労働省令で定められる予定です。

Q、月60時間以内の時間外労働なら、これまでどおりに25%以内の割増率で良いのでしょうか。

A、そうです。ただし、45時間を超える時間外労働時間についても、労使協定により割増賃金率を定めることになりました。努力義務ですが、25%以上にすることや時間外労働をできる限り短くすることが、今回の改正労基法で定められています。

Q、有給休暇が時間単位で取れるようになったのでしょうか。今までは一日単位しか認めていませんでした。

A、そうです。年次有給休暇を時間単位で取得できるようになりました。これが今回の労基法の改正の二つ目の大きなポイントです。現行では、年次有給休暇は1日単位で取得することとされていますが、労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。
1日単位で取得するか、時間単位で取得するかは労働者が自由に選択することができます。1日分の年次有給休暇が何時間分の年次有給休暇になるかは、労働者の所定労働時間を根拠に決定されることになります。例えば、1日の労働時間が8時間でしたら、有給休暇1日=8時間分の有給休暇に換算されます。

Q、月の時間外労働は何時間まで会社は許可しても良いのでしょうか。コンプライアンスを踏まえた法律の根拠を教えてください。

A、時間外労働の限度時間には法的な基準があります。厚生労働省の定める基準で、1ヶ月の残業時間の限度は45時間に定められています。年間の時間外労働の限度時間は360時間です。労働基準監督署の指導はこれに基づいています。平成22年4月からは月の時間外労働時間が60時間を超えると割増率が50%になります。そして、80時間を超えると、労働安全衛生法により、労働者から健康診断の申し出があると会社は健康診断を受けさせる努力義務が発生しています。100時間を超えると、本人の申し出があると同法により必ず健康診断を受けさせないとなりません。(労災が発生したケースだと、80時間を超えると会社の安全配慮義務違反が問われることになります。)
今回の労基法の改正は労働者の長時間労働の抑制と健康を配慮して、45時間以上の残業を減らすことを目標にしています。年間の時間外労働の限度時間は360時間なので、月あたりの時間外労働時間の目安は30時間以内と定めている会社があります。コンプライアンスを守っている時間の範囲になります。

Q、残業の指示命令は会社で行っていません。個別の業務に応じて各自が残業をしていますが、それでも会社の責任になりますか。

A、会社の責任になります。労働者の労働時間の管理をする義務が会社にはあります。個人別に1日の労働時間と月の総労働時間、時間外労働時間、深夜業の時間の把握などの義務が法律で定められているのです。来年の改正法施行を見据えて労基署の指導が強化される見込みです。

Q、その他のアドバイスは?

A、総務・経理の業務では、賃金計算や時間外労働時間管理などの業務負担が大きくなります。60時間を超えた時に割増賃金率を上げることや、時間単位の有給を使用したケースなどを考慮すると、ソフトの仕様の変更など煩雑な業務になります。給与システムの全面的な見直しは避けられないでしょう。また、残業の割増率の法改正に基づいて、就業規則・賃金規定の改訂も欠かせません。年次有給休暇も時間単位で取得できるように条文の改訂をしなければなりません。準備期間がこれから約1年ありますので、業務改善プロジェクトなどの設立をして対策を検討しましょう。

*就業規則改訂条文例
時間外手当の額は次の計算式による額とする。
(基本給+諸手当)÷1ヶ月平均所定労働時間×(1+0.25)×時間外労働時間数
時間外労働時間数が60時間を超えた分の時間数、上記計算式の0.25は0.50に読み替えて適用する。