「ペットを購入したら病気だった」
「あとから隠れた障害があったことがわかった」
このようなご相談が常日頃から非常に多く寄せられておりますので、
一般的な回答を示しておきます。
① まず契約書の確認を
まず第一に、
購入時に交わした契約書に
「病気・障害があった場合の処理について」
の規定がないかどうか確認してください。
「返品交換を受け付けます」「代金の返金をさせていただきます」など、
契約書に記載があれば、そのように処理していく、
あるいはそのような処理を求めていくことになります。
契約書にそのような定めがない場合、
定めていること以上の要求をしたい場合、
あるいはそもそも契約書自体が存在しない、という場合は、
②の「法律に基づく請求」に進みます。
② 法律に基づく請求
㋐ ペットを飼い続けたい場合
病気・障害を持っていてもそのまま飼い続けたいということは多いと思います。
この場合、民法562条の「追完請求権」として、
これまでにかかった治療費を請求することができます。
「追完請求権」は、売買の目的物が契約の目的に適合していない場合に
認められる買主の権利です。
買主としては病気・障害があることを望んでいなかった、として、
きちんとした売買契約を履行してくれ、と請求するわけです。
将来の治療費や介護費用については、
人間であれば後遺障害が残存した場合などに認められることがありますが、
後遺障害等級認定制度のないペット・動物については
客観的な基準がなく、当然に認められるものではないと考えられます。
重篤な病気で回復の見込みがない場合や、障害の場合は、
「履行の追完が不能である」として、
代金減額請求をすることも選択肢に入ります(民法563条)。
どれくらい減額できるのかは、
症状や買値などによってケースバイケースですが、
症状とそのために見込まれる治療費・介護費用によっては
0円…つまり全額返金、ということもありうるでしょう。
㋑ ペットを返却したい場合
ペットを購入する、ということは、
通常であれば「健康な個体を購入したい」ということになるでしょうから、
病気・障害だった場合は店側が購入者の要望する個体を引き渡す義務を怠った、
ということになり、すなわち店側の債務不履行となります。
これが
「債務の全部不履行」(民法542条1項1号)
になるのか
「債務の一部不履行で残存部分では契約目的を達成できない場合」(同3号)
になるのかはケースバイケースと思われますが、
いずれにしても病気・障害を理由として、契約を無催告で…
つまり、前置きなくいきなり解除することができます。
契約を解除すると、個体を返還することと引き換えに、
代金の返金を求めることができます(民法545条1項)。
また、解除とは別に、
治療費の負担だとか、
他のペットに病気が感染ってしまった、
消毒が必要になった、などといった損害が生じていれば
その賠償を請求することもできます(同4項)。
③ 具体的にどうするか
具体的には、①②の順番で進めていきます。
まず契約書を確認し、
契約書にそのような項目があれば
そこに定められている手続を店舗に求めていきます。
契約書に書かれていないこと、
例えば将来の治療費の負担だとかを
求めていく場合は、店側とゼロからの交渉となります。
損害賠償については
どの範囲まで保証・賠償するのかで
紛争となることが多いです。
また、店側から、
「病気・障害になったのは購入後だから当店に責任はない」
という反論が出てくることもよくあります。
不良品を売ったわけではない、ということです。
この場合、充実した反論をするためには証拠が必要になります。
獣医師さんの診断書を用意しておきましょう。
「購入前から病気・障害であった」という診断書があれば
強力な証拠となります。
時間が経てば経つほど、
「他の原因で病気・障害になった」と言われる可能性は高くなり、
「購入前から病気・障害だった」ことの証明は難しくなりますので、
購入して少しでもおかしいと感じるところがあったら
すぐに獣医師さんの診断を受けておいてください。
交渉がうまくいかない場合は
弁護士への相談・依頼を検討してみてください。