大会の中休み、高山恭子は対戦予定チームの戦力分析をしていた。
「4回戦のお相手、川越高校さんは1年生大会で負けた相手みたいね。」
まだ大学生だった恭子は、この試合を実際には見ていない。
「この時のメンバーが5人ベンチに入っていて、二人はスタメンね。うちに対して得意意識があるとちょっと厄介やなあ。」
「うちでは阿部君がこの試合を経験しているけど、おそらくその頃の彼と今の彼は全く別人になっているはずだし、是非ともリベンジして欲しいな。」
「そして5回戦は最初にしておそらく最大の山場となる鶴ケ丘高校さん。」
恭子はパソコンのデータ画面を開き、ため息をついた。
「この戦力差は如何ともしがたいなあ。特に長打力の差は歴然ね。」
「でも、今大会も各地で波乱が起きているし、あきらめずに全力で戦わないと。監督のためにも…」
そうつぶやいてから、恭子はふと思った。
監督のためというより、本当は自分のために勝ちたいと心から願っている事に気が付いた。
どうしても、このチームを勝たせたい。
ここまで強く自分の願望をかなえたいと思ったことは無かった。
一体、どうゆう深層心理が働いているのだろう?