林礼子様

 

手紙ありがとう。

林さんの夢、覚えています。

小学校の時に校内放送された読書感想文で医者になりたいと言っていましたね。

確かに医学部に入るのは難しいけど、全然諦める必要は無いと思います。

だって、チャンスは何度かある訳だから。

自分が追っている夢は、一生のうちに1回しか叶えるチャンスがありません。

そして、それを叶えられるのは極わずかの人間です。

でも、自分はその夢を追いかけて、今まで頑張ってきました。

結果はあと2週間足らずで出ます。

どんな結果になっても悔いは残さないように頑張っています。

だから、林さんも諦めずに頑張って。

中学校の時に何があったか自分は知らないので無責任な励ましになるかも知れないけど、とにかく諦めずに頑張って。

今の自分に言えるのはそれだけです。

良かったら試合を見に来てください。暑いから熱中症には気を付けて。

それでは。

 

斉藤夏輝

 

夏輝からの手紙を受け取った林礼子は、彼が小学校の時の読書感想文を覚えていたことに驚いた。

 

自分でも半分忘れていたことだ。

 

思えば、あの事が雅美を暴走させる最初の一歩になったのかも知れない。

 

 

あの頃は自信満々というか、向こう見ずというか、自分は無敵で全能な存在のように思っていたかもしれない。

 

事件があっても無くても現実的には難しいんだろうと思う。

 

でも、何だか斉藤君が言うなら、何だか出来そうな気になる。

 

もう1回、目指してみようかな…