源氏物語名場面⑳
朧月夜 漆
御帳台内部
激昂した右大臣は懐紙を
拾い上げると御帳台の中を覗き込んだ。
すると、
見覚えのある優男が、
悪びれもせずこちらを見ている。
「あ、あなたは!」
右大臣が叫ぶと
優男はわざとらしく夜具
を引き上げて顔を隠そうとした。
侮辱された
右大臣は怒り心頭に発するが
流石に源氏を面罵することは出来ない。
今は
臣籍に降っているが
元はといえば故桐壺院の皇子である。
懐紙を鷲掴みにすると
憤然として
自分よりも格段に知恵の働く娘
弘徽殿*大后のいる【寝殿】に向かった。
*大后おおきさき 帝/朱雀帝の生母
右大臣
「源氏の君が
当邸に忍び込まれるのは
私どもを侮っておられるのです」
弘徽殿大后
「此度の不埒な行動は
源氏の君を朝廷から追放する
またとない絶好の機会になりえます。
じっくり策を練りましょう」
■
この出来事がもとで、
源氏は須磨へ下ることになる。
朧月夜・完
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