第三十帖 藤袴
光源氏37 紫の上29 蛍兵部卿宮 玉鬘25 内大臣40
秋好中宮28 夕霧16 明石の君:28 柏木21
明石の姫君9 髭黒右大将32 花散里23
雲井の雁 弁少将 近江の君
冷泉帝19
纓えい
冠の縁を二分して額のほうを磯、後方を海といい、
海に挿し入れて垂らす細長い布を纓と称した。
直衣のうし
公家の平常服
女房たちが女主人をうっとりと眺めているところに夕霧がやって来た。
夕霧は少し濃い目の鈍色の直衣姿で、冠に纓 を巻いている。
さすがに源氏の息子だけあって、立ち居振る舞いが優雅だ。
玉鬘が六条院に迎えられた当初から、ふたりは姉弟として接していたので、今さら他人行儀に態度を改めるのも照れくさい。
面会は、御簾と几帳をはさんで女房の取り次ぎなしで行われた。
夕霧は源氏の名代として、冷泉帝の言葉を伝えにきたのである。
玉鬘、尚侍任官の件であった。
「父上が、『だれにも聞かれないように』と仰せになったことをお伝えしようと思っておりますが、こちらで宜しいでしょうか」
夕霧がさも意味ありげに言うので、近くに控えている女房たちはその場をそっと離れた。
そして、夕霧自身がついさっき思いついたことを、あたかも源氏からの伝言のようにもっともらしく玉鬘に話した。
「冷泉帝のご執心が尋常ではないので、くれぐれも注意なさい」
というような内容である。
玉鬘はなんとも返事のしようがなくふっと溜息をついたが、その様子がとても可憐でやさしく夕霧はますます心魅かれた。
*出仕 宮仕えに出ること
夕霧、
「今月中に喪が明けますが、お日柄が佳くありません。
父上が、『十三日に*除服のお祓えをするので、賀茂の河原にお出でなさい』とのことです。
私も、お供をいたしましょう」
*除服 喪服を脱ぐこと