紅葉賀⑰媚態 | 吉備路残照△古代ロマン

吉備路残照△古代ロマン

吉備路自転車道を回って以来すっかり古代吉備国の残り香に取り憑かれました。
歴史と神話が絡み合っているから多くの遺蹟の故事来歴が謎に包まれています。
鬼ノ城・温羅伝説・鳴釜神事等の謎に新しい解釈を加えていけるので楽しみです。


風俗博物館牛車 牛車 風俗博物館

源氏物語ミュージアム牛車 半蔀車(はじとみぐるま) 牛車(ぎっしゃ)の一種。上皇・摂関・大臣・大将が使用した。宇治市源氏物語ミュージアム

  ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

源氏は、「ずいぶん、若づくりをしたものだな」と思う一方、「今、どんな気持ちでいるのだろう」と気になって、裳の裾をちょっと引っ張ってみた。


源典侍(げんのないしのすけ)は派手な彩色を施した扇をかざして、振り返った。

まなざしは、思い入れたっぷりの流し目。

年季が入っているだけに媚態が身についているが、目もとは黒ずんで窪み、頬の肉はげっそりと落ちこんでいる。

扇で隠しきれない髪の毛は、すっかりそそけている。


源氏が、「その扇は、年に似合わない。派手すぎる」と自分の扇と取り替えると、隅のほうに、古めかしいが風流な筆跡で書き流していた。

「森の下 草老いぬれば (年寄りだから男が寄りつかない)」

「なんとまぁ明け透けな。他に書くこともあろうに」

源氏は苦笑しながら皮肉まじりに、

「『森こそ夏の宿りなるらし』という歌のように、あなたのところには宿る男が多いのですね」


源氏はだれかに見られないかと気が気でないが、源典侍はまるで頓着しない。

思わせぶりに、

○ 君し来ば  手なれの駒に  刈り飼はむ

     盛り過ぎたる  下葉なりとも

光君がいらしたら、お召しの馬に草をご馳走しましょう。盛りを過ぎた下草ですが、わたしとともに

源氏は煩わしくなって、

○ 笹分けば  人やとがめむ  いつとなく

     駒なつくめる  森の木隠れ

森の木隠れの笹を踏み分けて訪ねたら、咎められましょう。いつも大勢の男たちがあなたを慕って集まっているのですから

源氏が立ち上がろうとすると、袖にすがって泣き出した。

「こんなつらい思いをしたことはございません。今になって捨てられるとは、いい恥さらしです」




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