
城内は山の頂にしては意外なほどに平坦でかつ広々としているが、数々の乱暴狼藉を働いて土地の人々を苦しめた悪鬼が住んだという温羅伝説にふさわしく、殺風景で荒涼としている。
吹く風も心なしか寂しく、また乾いている。
だが、殺風景だろうと荒涼としていようと空っ風が吹いていようと何だろうと、私は、今、鬼ノ城の中に立っている。
吉備路のいろんな所から何度も眺め、いつか行かねばならないと思っていた、あの古代山城にだ。
念ずれば通ず、といえば大袈裟かも知れない。
すべて岡山県立博物館のお蔭である。
私事にわたるが、どうせ期間限定だからと当初渋っていた岡山市への転入届を出していて良かったと初めて思った。
吉備の中山で温羅に的を絞って弓を引いている吉備津彦命めがけて、温羅が投げつけた岩ほどの巨石は、その辺を少し掘れば出てきそうだ。
造山古墳や吉備の中山などの頂部が、穏やかな樹林に囲まれているのと好対照である。
鬼城山は、「すり鉢を伏せたような形の山」としばしば形容されるが、正に言い得て妙。
その地勢に目を付け、百済から亡命してきた築城技術者たちの手を借りて、吉備高原の南端に唐・新羅連合軍の襲来に備えるための朝鮮式山城を築いたのだろう。
白村江の戦い・元寇・秀吉の朝鮮侵攻

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