自分自身、驚きました!
小説を読んで涙腺(るいせん)が
ゆるむことは時々ありますが、
まさか食事の描写で涙するとは・・・。
「エミリの小さな包丁」森沢明夫(角川文庫)
都会暮らしで心に傷を負った25歳のエミリは、
海辺に住む祖父の家で暮らし始めます。
祖父とは15年ぶりの再会です。
口数も少なくぶっきらぼうな祖父。
最初は戸惑っていたエミリでしたが、
次第に祖父の手料理に癒されていきます。
無骨な風貌の印象とはまったく違い、
繊細かつ丁寧な祖父の魚料理は、
エミリの心を惹きつけて離しません。
あなたも最初と最後の温かな食事の場面に
かならずや涙するでしょう。
まさに体内の毒が浄化されるがごとく――
なのであります。
普段から口数の少ない祖父は、
こんな言葉でエミリを励まします。
幸せになることより、
満足することの方が大事だよ
タイトルにある「包丁」がキーワードです。
冒頭のシーンで凶器となる「包丁」は、
最後には「満足」の象徴として描かれます。
生きづらさを感じる人たちに、
生きるっていいな、
もう少し頑張ってみようか、
と思わせてくれる小説です。
あ~あ、ほっこりできる小説って、
本当にいいものだなぁ。