アナウンサーという仕事のいちばんの怖さ。

それは、「ひとたび発した言葉は取り返しがつかない」ことです。

まさに電波メディアの宿命ですね。

 

その反動でしょうか? 

私自身は、活字メディアに対する憧れがとても強い気がします。

 

もともと読書は大好きです。

あらためて自分の本棚に目をやると、

やはり職業柄、話し方・スピーチの上達本、司会進行のマニュアル本、

そしてアナウンサーが著した本が目立ちます。

 

 

これまで何度も本に助けられたことがありました

仕事に悩んで行き詰まったとき、

どっちに進めばいいのかわからなくなったとき、

たくさんの本に勇気づけられました。

 

とりわけ、著者がアナウンサーの本は共感する部分が多く、

いまでもときどき手に取っては、初心にかえっています。

 

今回、久しぶりに読み返したのが、この2冊です。

 

 

 

初めて読んだときに蛍光ペンでラインを引いた箇所を、以下に抜粋します。

 

まずは、菊間千乃著 『私がアナウンサー』 (文春文庫)から。

 

<P139> 「タレントさんになれるほど、きれいでもないし、度胸もない。でも、アナウンサーならば、テレビにも出られて、そこそこ有名で、会社員だし安定してるし、いいんじゃないかな? (中略) もちろん、そういう人がアナウンサーを目指したって、一向にかまわない。確かに、そういう部分もある。でも、でも違う。アナウンサーという仕事には、もっと奥深いものがあると思うから」

 

著者は、元フジテレビアナウンサーです。

生放送のリポート中に、高さ13メートルのビルから墜落し、腰椎骨折の重傷を負いました。

本書には、リハビリを経て現場に復帰するまでの壮絶な日々が綴られています。

フジテレビ退社後は、弁護士に転身し、いまは法曹界で活躍中のたくましき女性です。

 

 

次に、山川静夫著 『私のNHK物語 アナウンサー38年』 (文春文庫) から。

 

<P27~28> NHKアナウンサーの伝統として、『若さとあこがれを持て』という教えがある。『若さ』 とは単なる年齢的な若さではない。肉体的な若さとともに精神の若さ、みずみずしい感性を持ち続けよという教えである。また『あこがれ』とは、目標である。うわついた現実ばなれした理想ではない。目標のない人間から向上心は生まれないし、進歩もない。現実への距離はたとえ遠くとも、自分の目指す旗じるしを高くかかげよということだと解釈する」

 

著者は、元NHKアナウンサーです。

紅白歌合戦の司会を過去14回担当。NHKの顔として歴史に残る名アナウンサーです。

歌舞伎に造詣が深く、芸能評論家としても著書が多数あります。

本書には、ときに大失敗をしながらも常に前向きだった、青春の日々が綴られています。

 

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2冊の抜粋部分には、ともにアナウンサーという仕事への熱い思いが込められています。

それは、著者おふたりの “真のプロを目指した決意” の表明 です。

 

その本質は、けっしてアナウンサーという仕事に限りません。

どんな仕事にも共通する “決意” の表明と理解するならば、

きっとすべての人たちへのアドバイスとなるはずです。