電験三種に合格すると「出力5000kW以上の発電所を除く電圧5万V未満の事業用電気工作物の保安監督」ができる。

 

ほぼ全国の事業用電気工作物の保安監督が可能という凄まじい資格。そんな大役自分には到底務まらないと分かっていても構わなかった。

 

電気が得意なら一度挑んだ試練を諦めたままでいる事に耐えられなかったから。

 

受験を決意して勉強を始めたのは去年の8月下旬。対策期間は213日。

一日の勉強時間は基本的に最低6時間、可能なら2時間追加。週一日は何もしない休日を必ず設けていた。

受験勉強で重要視したのは燃え尽きない事。闘志を失ったら本当に終わりというのは最初から確信していた。

理論・電力・機械は教則本や動画で勉強して、一か月でインプットを終えて纏めノートを作り、あとは過去問演習に取り組んでいた。何周したかなんて覚えてない。そのうち周回すればするほど別科目の理解も進む感覚があった。(初期は近所の図書館で問題を解き、一年分解き終えるのに二時間掛かって泣く事も多かった)

が、法規は覚える事が多すぎて勉強が捗らず最後まで梃子摺った。自分で言うのも何だけど、理系にとって暗記科目は最もやり難くて何度か絶望した。

電技解釈本には手を出さず、条文問題を練習できるスマホアプリをひたすら解いて、過去問を勘ではなく知識で解けるようになるまで練習を続けた。その中で、ここ数年の電力情勢や一般送配電事業、電力広域的運営推進機関、受験間近に公表された受験範囲に載っていたサイバーセキュリティなどの内容を勉強するには日本の電力自由化を歴史で学び直す必要があり、改めて纏めノートを作った。

どの科目も最初から勘で解く事は考えなかった。過去問は10年分、解法を自分の言葉で説明できるまで勉強を続けた。計算問題は一問につき5分以内、知識問題や条文問題は即答できるようにYoutube動画やスマホアプリなど使える教材は何でも使った。

 

機械科目は変圧器・直流機・誘導機・同期機を確実に押さえ、他に電動機応用、照明計算、伝熱、電気分解がある。計算問題が多く、ちゃんと考えれば正解できるものが多い。電力系統工学で学んだ一機無限大母線系統のベクトル図や定態安定度の知識が役立つ場面も多かった。苦手分野だった論理回路や情報理論の問題も過去問や問題集は解けるようになるまで勉強を続けた。図示が面倒な問題は紙にコピーして解いた。

 

電力科目は知識問題が多く対策しやすいが、汽力効率計算、燃焼計算、地絡計算はかなり梃子摺った。汽力効率では「ボイラ効率・タービン室効率・発電機効率・発電端効率・送電端効率・タービン効率・発電端電力・送電端電力・所内率」の公式を単位も含めて正確に書き下ろせなければならない。燃焼計算では問われているのが酸素量なのか空気量なのか理論量なのかを意識しないといけない。地絡計算は地絡回路をテブナンの定理で置き換えて回路をほぐす練習をしないといけない。しかしそれでも電力は得点し易かった。電圧降下計算と弛み計算が意外に得意だった。(ただし復水器の問題は比熱に関する問題のみ最後に解く事にし、「タービン熱消費率」という用語が出てきたら捨てると決めていた)


2月になるとセオリー通りにいかない事も分かってくる。選択肢を覚えてしまわないように書き込みは過去問集ではなく別のノートだったので解答スペースを気にするようになったのもこの頃だったし、60点以上で良いとは分かっていても、いつも80点以上を目指していて本番の練習はしてなかった。

穴埋め問題を先にやるなど戦略は必要だが初見のつもりで解くと中々ロジカルに解けない。記述を途中から読む等しないと時間が足りない恐れが出てきた。

試験会場の自分をイメージしてこの頃の目標は80点以上といった余裕を持たせた得点ではなく、理論・電力・機械を12問以上、法規を10問以上稼ぐとなった。これまで以上に確実な実力を付けなければならず、勘にばかり頼る選択肢はやはり無かった。

 

発電所や送配電設備のイメージが付けやすい電力科目が最も対策し易く、基礎ゆえに幅広い計算問題やイレギュラーな知識問題が多い理論科目が最も対策しにくい。苦手分野の公式は全てアウトプットできるようにし、特に平行平板コンデンサ、点電荷、電磁力、電磁誘導の公式群は問題文を見た瞬間書けるようになるまで全科目の公式集を作って定期的にアウトプット。覚え方は公式群の頭文字を取るなど工夫していた。

最も対策し難い理論

最も対策し易い電力

最も勉強し易い機械

最も梃子摺った法規
 

直前期の時点で予想模試が残っていたが、今から取り組んでも自信を失くす恐れが高かったので手を付けず、これまで通り過去問演習を続けていた。


■対策期間中、次の5つを徹底的に意識していた。

①100%とは言わないが勉強に気合は不要。気合を出すぐらいなら休憩すべし。

②人前で合格宣言して後に引けなくする的な行為はすべきではない。宣言を意識するようになって肝心の勉強が疎かに成りかねない。精神的に追い詰められて合理的な受験戦略が立てられなくなる、公式の暗記にアイデアを使う等の戦略ができなくなる。心が疲れて燃え尽きやすくなる。

③名言集は読まない方がよい。気分を高揚させただけでその日の気力を使ってしまいかねない。内面はあまり声に出してはいけず、後ろ向きな気持ちはブログに吐き出し、前向きな気持ちは心に秘めておく事。

④勉強時間に拘り過ぎてもいけない。身の丈に合った勉強習慣は必要だが、場合によっては一日一時間でも構わないので毎日勉強に触れなければならない。ただし一日一時間のような日が短期間に二日以上連続するのは好ましくなく、スケジュール管理を怠ってはいけない。勉強を一日怠るだけで過去問が本当に解けなくなる事が多い。

⑤受験勉強で一番大事なのは燃え尽きない事。やる気があるけど勉強できない状態は燃え尽きとはいわない。やる気その物を失った状態を燃え尽きという。そのためには安定したメンタルが大前提として必要。朝日・食事・運動を重視し、勉強時間は一日最低6時間、できればもう2時間程度追加できるとよい。一日3時間などでは足りないし、9時間以上は目標として長すぎる。週一日は本当に何もしない休日を設ける事。


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本番前日はいつも通りに過ごして早めに寝た。
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