機械科目の苦手分野がわかった、
情報理論とファラデーの電気分解。


■変圧器

【巻数比】
変圧器は一次側の電圧を変成して二次側に送り出す。電圧や電流を変える事を変成という。このしくみを単相で単純化すると環状鉄心の両側にコイルを巻き付けて各々端子を引き出した形をしており、両者の巻数が異なれば電圧や電流を変成できる。一次、二次側の巻数をn1,n2とすると巻数比aは「a=n1/n2」と表し、電圧比はV1=aV2、電流比はI1=I2/aとなる。もっときちんと書くと「a=n1/n2=V1/V2=I2/I1」で、電圧は巻数比に比例して変成され、電流は巻数比に対し逆比で変成される。変圧器で最も重要で基本的な関係。

【変圧器の皮相電力】
変圧器では内部の損失を無視すれば一次側と二次側の皮相電力が完全に等しく「V1I1=V2I2」の関係がある。この関係は上述のa=n1/n2=V1/V2=I2/I1から得られる。

【誘導起電力の実効値】
変圧器や同期発電機に発生する誘導起電力はその実効値Eを「E=4.44fnφm」という式で示す。φmは交番磁束の最大値、fはその周波数、nは起電力が誘導されるコイルの巻数である。変圧器や回転機の機械的イメージからこれを導出するのは正直難しく、どちらかというと交番磁束の瞬時値がφ=φmsinωtで与えられるとし、コイルに誘導される起電力e=-N(dφ/dt)のφに代入してe=-nφmωcosωtとなり、nφmω=nφm2πfを√2で割った量をeの実効値Eと定義してE=(2π/√2)fnφm=4.44fnφmと導出する方がまだ分かりやすい。一度導出したら暗記すべし。

【変圧器の等価回路】
これは面倒だが必ずマスターしなければならない。変圧器には一次と二次の巻線にそれぞれ電気抵抗があり、それぞれ変圧器に寄与しない漏れ磁束による誘導起電力を等価的に回路素子で表現する「漏れリアクタンス」がある。さらに一次側には鉄心の励磁に寄与する「主磁束」を作るリアクタンス成分と鉄損の原因となる抵抗成分があり、これらを別々の電流成分として表現できるようにサセプタンスとコンダクタンスの並列回路で表現される(励磁回路と呼ぶ)。励磁回路は電源側に移動する事もあり、あるいは無視される事もある。

【2次換算等価回路】
1次ではなく2次というのが気持ち悪いが、巻数比を用いて2次側におけるコイル電圧、負荷電圧、巻線抵抗、漏れリアクタンス、負荷インピーダンス、電流を換算して1次側と結合した回路図を変圧器の「2次換算等価回路」などと呼ぶ。2次側を1次側に換算するともいう。2次側電圧を巻数比a倍し、2次側抵抗をa^2倍、2次側電流を1/a倍する事で2次換算できる。これも面倒だが練習すべし。

【定格値】
電力機器が扱える上限値(最大容量や最大電圧)。容量と電圧の定格が与えられれば定格電流も定まる。電気分野で単に容量という時、皮相電力[VA]を指す事が多い。容量と出力は明確に異なり、前者は皮相電力[VA]、後者は有効電力[W]を指す。単位をきちんと見るべし。

【主磁束】
変圧器の動作に寄与する磁束成分。寄与しない成分は漏れ磁束と呼び区別される。

【百分率インピーダンス】
「電圧源、インピーダンス、負荷による直列回路」において、一次側に定格電流I1nを流した時の回路素子の電圧降下を一次側の定格電圧V1nで割って得られる百分率の値を百分率インピーダンスと呼ぶ。最初の鍵括弧は機械科目や電力科目で重要な等価回路で、この舞台設定で抵抗rによる電圧降下の百分率は「p=(rI1n/V1n)×100」、漏れリアクタンスxによるものは「q=(xI1n/V1n)×100」、インピーダンスZによるものは「%Z=(ZI1n/V1n)×100」となる。最後の%Zが百分率インピーダンスで、%Z=√p^2+q^2」でも計算できる。

【短絡電流】
百分率インピーダンス「%Z=(ZI1n/V1n)×100」において、V1n/Zは定格一次電圧で変圧器のインピーダンスZに生じる電流である。これは2次側の負荷電流によるものではなく数千~数万アンペアという危険な電流で、短絡電流と呼ばれる。短絡電流をIsと表せば百分率インピーダンスの式からIs=(In/%Z)×100が得られる。電力、法規科目でも使う重要公式。

【電圧変動率】
変圧器を無負荷にすると、2次側の端子が解放電圧V20になるので定格2次電圧V2nに等しくなる。この変化の割合を電圧変動率と呼び、ε={(V20-V2n)/V2n}×100で求められる。同期機ではその内部の同期インピーダンスが小さい(=短絡比が大きい)ほど電圧変動率が小さいという関係が必要になる。ちなみに負荷が少ない場合は「ε≒pcosθ+qsinθ」という近似式が成り立つので知っておかないといけない。p,q,θという幾何学的な量が現れる理由については次の「電力回路のベクトル図」による。

【電力回路のベクトル図】
電圧変動率の近似式「ε≒pcosθ+qsinθ」が成り立つ理由はこのベクトル図にある。電圧源、インピーダンス、負荷による直列回路において、電源電圧、電圧降下、負荷電圧の関係をベクトルで表した時、電圧降下ベクトルは負荷力率に応じて電源電圧と負荷電圧に「相差角δ」を生じさせる。リアクタンスか有効電力が少なければδが狭まり、電源電圧と負荷電圧が同相に近づいて近似式が成立する。送配電や同期機の計算でも同じ形式のベクトル図が描けて、交流電力回路において重要なものとなる。

【変圧器効率】
変圧器に限らず機械の効率は出力÷入力であり、入力=出力+損失である。変圧器は出力電力÷(出力電力+鉄損+銅損)を式で表して「αPncosθ/(αPncosθ+Pi+α^2Pc)」で示される。一見ひどく複雑であるが、Pnは全負荷(定格容量100%使用)における皮相電力[VA]、Piは鉄損[W]、Pcは銅損[W]、αは負荷率と呼ばれる無次元量で全負荷に対する部分負荷の割合を表す。この式で重要なのは負荷容量と銅損が負荷率に影響する点と、部分負荷の銅損が負荷率の2乗に比例する点である。鉄損と銅損の記号Pi,Pcをきちんと覚えるべし。

【変圧器損失】
変圧器の損失には鉄損と銅損がある。前者を無負荷損とも呼び、負荷電流が無くても変圧器内部の1次側で消費される有効損失で渦電流損とヒステリシス損の合計となる。後者は負荷損とも呼び、変圧器の巻線抵抗で奪われるジュール熱の有効損失である。これ以外にも多くの損失があるが、変圧器損失の9割以上は鉄損と銅損なのでそんなに気にする事もない。重要なのは銅損が負荷電流の「2乗」に比例するという点である(Pc=r×I^2)。

【変圧器最大効率】
変圧器の効率は鉄損と銅損が等しい時に最大効率となる。つまりPi=α^2Pcが条件となり、「α=√(Pi/Pc)」を満たす負荷率αで運転している時が最大効率を実現する。Pi,Pcは全負荷時の鉄損と銅損であり、変圧器効率が最大になる時の負荷が全負荷の(100α)%であることを意味する。

【単巻変圧器】
1次側と2次側で別々の巻線を用いず共通の巻線としたものを単巻変圧器と呼ぶ。1次巻線から並列に巻線を繋いで端子を引き出した形になり、1次電流の一部が2次側に分流するようになる。このとき2次側に分流する巻線を直列巻線、1次側に戻る巻線を分路巻線と呼び、1・2次の変圧比に応じた定格電圧と定格電流による皮相電力を自己容量、負荷電力に相当する皮相電力を負荷容量と呼び区別される。自己容量という用語は電力、法規科目でも登場する。単巻変圧器の特徴として漏れ磁束と電圧変動率が少ないというのがある。

【変圧器の並行運転】
2台以上の変圧器を並列に接続して運転することを並行運転と呼び、安全かつ効率的な運転を行うべく幾つかの条件を守る必要がある。
・極性の一致 …守らないと変圧器同士で循環電流が流れる。
・巻数比の一致 …守らないと変圧器同士で循環電流が流れる。
・%Zの一致 …守らないと%Zが低い側の変圧器が先に容量を使い切って負荷分担が非効率になる。
・抵抗と漏れリアクタンスの比の一致 …守らないと電流の位相がずれて負荷への供給電力が減る。
・相回転と角変位の一致(三相変圧器の場合) …守らないと変圧器同士で循環電流が流れる。

【変圧器の負荷分担】
変圧器2台で並行運転する時、各々が分担する負荷の大きさは百分率インピーダンス%Zの逆比で分担される。全体の負荷電力をPとした時、P1=P×(%Z2/%Z1+%Z2)、P2=P×(%Z1/%Z1+%Z2)となる。ところでこのように2か所の百分率インピーダンスを計算に使う時、それらの基準容量が異なる場合はいずれかを容量換算して統一しなければならない。

【%Zの基準容量換算】
%Zを新たな基準容量に換算するには、換算後の百分率インピーダンスを%Z'として「%Z'=%Z×(新基準容量/旧基準容量)」を適用すればよい。したがって負荷分担や短絡電流の計算前には%Zの基準容量が等しいかどうかを確認しなければならない。


■直流機

【マブチモーター】
工作で身近な直流モーター。直流機は回転機の一種で、モーターや発電機のように電力と回転を相互変換する機器を回転機と呼ぶ。回転機には直流機と交流機がある。マブチモーターは円筒型の入れ物(ハウジング)に固定したN極とS極の永久磁石と、その内側で回転するローターから成り、ローターには電流を流すコイルが何重にも巻かれている。コイルの導線をローターから取り出す部分ではブラシという金属の板が回転軸と機械的に接触しており、コイルの回転による相対的な磁界の反転でトルクの向きが周期的に変わるのを防止する整流子という部品を介して端子と繋がっている。これにより軸の回転が180度ごとにコイルの電流が反転する為、例えばN極側では常に上向き、S極側では常に下向きの電磁力を維持し、回転軸を回転させ続けることができる。

【電機子と界磁】
回転機の基本的構造として電流を取り出すコイルと、電磁誘導に必要な磁束を作り出す磁石(あるいは電磁石)が不可欠である。前者のように出力端子に繋がっている側の部品を電機子、後者のように端子に繋がっていない側の部品を界磁と呼ぶ。マブチモーターは回転電機子型、電力会社等で使われる発電機は回転界磁型である。固定界磁で励磁して回転電機子で出力するか、回転界磁で励磁して固定電機子で出力するかの違いで、電機子と界磁は回転機の電気的なしくみに着目した感じの呼び名である。

【重ね巻と波巻】
直流機の巻線の構造に関わる話でこれも覚えなければならないが、このしくみは難解すぎて手が付けられない。しくみまで理解しなくとも重ね巻と波巻では電機子巻線の「並列回路数a」が異なり、重ね巻では極数pに等しく、波巻では何があろうと必ず2である事は知っておかないといけない。並列回路数aと直列導体数(コイルの直列数)の積が全コイル数zである事も理解していないと後述の誘導起電力の式を使いこなせない。

【直流機の誘導起電力】
直流機の難関その1。直流電動機の電機子機巻線に誘導される起電力は「e=pzφN/60a」で求められる。この導出も最初に何度か行えば暗記でよい。pは極数(磁石1つでp=2)、zは全コイル数、φは磁極一極辺りの磁束、Nは軸の回転数、aは並列回路数である。何度も声に出して脳に焼き付けるべし。

【電機子反作用(直流機)】
直流機には、回転しながら電流を取り出す電機子と固定位置で主磁束を作る界磁がある。したがって界磁の主磁束がしっかりしていれば起電力を正常に誘導できる。だが実際は電機子コイルの電流が生み出す磁界によって主磁束が歪められてしまう(電機子反作用)。こうなると界磁磁束が存在しない直線状の中心軸(幾何学的中性軸)に対し、電機子コイルに誘導される磁束の中心軸(電気的中性軸)がずれてしまい、誘導起電力の低下、整流子間の電圧が不均一になり局所的な電圧異常、電機子コイルのスパークなどが発生する。この対策として、磁極に埋め込まれる補償巻線や、界磁と直交する箇所に配置される補極で電機子反作用磁束を打ち消して電気的中性軸の傾きを修正する。いずれの対策も電機子巻線に対し直列に接続される。

【直流機の励磁方式】
直流機は励磁方式による区別があり、大きく分けて励磁回路が直流機と完全に独立した他励式と、直流機内部に励磁回路を設けた自励式がある。自励式には直巻式と分巻式があり、これらすべての回路図を、各電流や各電圧の区別及び、発電機と電動機の違いによる起電力の方向の区別も含めて正確に描けるようにならなければならない。

【直巻発電機】
励磁回路と電機子巻線を直列接続して出力端子に向かうタイプの直流機。回路図を作れば分かるように、誘導起電力から電機子抵抗降下と界磁抵抗降下を差し引いたものが端子電圧となる。負荷に応じて端子電圧が変化してしまう等の問題があり、この方式の発電機は利用されていない。

【分巻発電機】
電機子の主回路に励磁回路が並列接続されたタイプの直流機。端子電圧と界磁抵抗降下が等しくなる。

【他励発電機】
励磁回路が電機子の主回路と完全に独立したタイプの直流機。誘導起電力から電機子抵抗降下を差し引いたものが端子電圧となる。

【直流電動機】
回転機はモーターとしても発電機としても構造は基本的に変わらない。直巻、分巻、他励はすべて発電機と同じ回路図となる。ただし電圧と電流の方向や電流の分流が変わるので注意。直流電動機の回転角速度ωはトルクTと出力Pによって決まり、「P=ωT」の関係がある。さらにトルクは電動機の構造で決まる係数k'を用いてT=k'(φ×Ia)で示され、界磁磁束φと電機子電流Iaに比例する。最後に回転速度は電動機の構造で決まる別の係数をkとしてN=(V-Iara)/kφで示される。これらの関係から、Iaに対し他励と分巻では回転数はあまり変化しないが、直巻では電機子電流の増加で回転数が急減する。トルクに関してはIaの増加に対し、直巻は2次関数的に増加、他励と分巻は漸近線に収束するように増加する。


■誘導機

【アラゴの円盤】
アルミのような磁石にくっつくわけでもない金属で作った回転盤を水に浮かべて、その真上で磁石を動かすと、回転盤が磁石に引っ張られるようにやや遅れて回転するという不思議な実験がある。この現象はフレミングの法則で説明できて、磁界が動くとアルミに電流が生じ、磁界の中で電流が流れる事になり回転盤に電磁力を生じる。ちょうど磁石の動きを追いかける方向に電磁力が生じるので、磁石を円盤に沿うように動かすとトルクという形で円盤に回転力を与える(これをアラゴの円盤という)。誘導機のしくみはアラゴの円盤を利用している。

【同期速度】
誘導機は交流機の一種で、同期機という交流機もある。いずれも外側の固定子が発生する回転磁界で回転子を回転させるしくみで、固定子が作り出す回転磁界の回転数を同期速度と呼ぶ。回転磁界の磁極数pは固定子巻線の構造で決まり、その交流電流の周波数をfとすれば、同期速度Ns=120f/pで求められる。単位は一分当たりの回転数[min^-1](RPM:Rotation Per Minutes)である。

【すべり】
誘導機における最重要概念。回転磁界の回転数(=同期速度)と軸の回転数Nとの差の割合をすべりと呼び、s=(Ns-N)/Nsで定義される。同期速度一定の時、回転子が遅いほど滑りが大きい。誘導機の2次側(回転子)における誘導起電力、漏れリアクタンス、周波数、電流は、すべりの影響を受ける。

【誘導機の等価回路】
これは何が何でも理解の上で描けるようにならなければならない。特に2次側(回転子側)が重要で、回転子に誘導される起電力が単なるE2ではなくsE2、漏れリアクタンスはsx2となる。一次側の抵抗要素はr1,x1、二次側の抵抗要素はr2,sx2である。

【すべり周波数】
誘導機は同期速度と回転速度が異なる為、回転子から見た同期速度はすべりによって幾分遅くなる。同期速度に対応する周波数をf1とすると、回転子の誘導起電力に寄与する周波数はf2=sf1で計算される。このf2をすべり周波数と呼ぶ。

【2次電流】
誘導機の等価回路で2次電流を求めるには普通にsE/√{r^2+(sx)^2}を計算すればよい。それだけである。電流にもきちんとすべりが含まれる点は留意。

【2次入力】
誘導機の等価回路で2次電流を求める時、分子と分母をsで割るとrがr2/sになる。式自体の意味は変わっていないが、r2/sから巻線抵抗r2を差し引くと「{(1-s)/s}r2」という量が現れる。計算過程を纏めるとr2/s=r2+{(1-s)/s}r2となり、全体をs/r2倍すると「1=s+(1-s)」の関係が得られる。言葉で書くと「2次入力=2次銅損+2次出力」であり、その比率は「1:s:1-s」となる。この関係により、3つのうち2つとすべりが与えられれば、残り1つを知る事ができる。

【誘導電動機のトルク】
トルクはP/ωで計算できるが、誘導機にはすべりがある。同期速度側でトルクを求めるには「二次入力/同期角速度」、回転速度側では「二次出力/回転角速度」で計算しなければならない。

【誘導電動機の安定運転領域】
すべり1(=停止時)から誘導電動機を始動させて回転数を上げていくと、最初のうちは回転数が上がるにつれてトルクも増加していく。すなわち回転数の上昇で更に加速し回転数の低下で更に減速するので安定運転ができず、負荷の動力としては不安定な運転領域となる。もう少し回転数を上げると回転数の上昇でトルクが減少に転じる運転点があり、その高回転側の領域では回転数の上昇で減速、回転数の低下で加速しようとするので安定運転が可能となる。この運転領域を安定領域と呼ぶ。

【巻線型誘導電動機】
誘導機には「かご型」と「巻線型」の2種類がある。かご型は銅で作られた金属棒をかご状に配置して両端を短絡環で固定した回転子を回転磁界で回転させるもので、巻線型は3相分の巻線を回転子のスロットに収め、ここからスリップリングとブラシを介して専用の端子を引き出して可変抵抗器を接続している。消耗品を使ってまで可変抵抗器が接続されるのは、比例推移という特性を利用して同一トルクで回転数(すべり)を調節したり、始動時に外部抵抗を大きくして始動電流を減らしトルクを大きくするなどの為である。

【誘導電動機の比例推移】
巻線型のみが持つ性質で、すべりsと二次抵抗r2の比を一定にすると、トルクを一定維持できる。これを行うのが外部の可変抵抗器で、二次巻線と直列接続されている。

【かご型誘導電動機の始動方式】
誘導電動機は始動時に大きな電流が発生するので工夫を必要とする。全電圧始動、Y-Δ始動、補償器始動、リアクトル始動の4つがある。

【全電圧始動】
容量が少ないものであれば特に何もせず最初から定格電圧を与えて始動させる。これを全電圧始動という。かご型の始動法の一つ。

【Y-Δ始動】
一次巻線をY結線にして始動し、加速後Δ結線に接続変更する始動法。始動トルクと始動電流は全電圧始動の1/3になる。かご型の始動法の一つ。

【補償器始動】
一次側に始動補償器という変圧器を接続した始動法。タップ電圧を全電圧の1/nにすると、始動電流と始動トルクは(1/n)^2になる。かご型の始動法の一つ。

【リアクトル始動】
一次側にリアクトルを接続して始動し、加速後短絡させる始動法。始動電流を全電圧の1/n倍にすると、始動トルクは(1/n)^2倍になる。かご型の始動法の一つ。

【誘導電動機の速度制御方式】
誘導電動機の回転数はN=(120f/p)(1-s)で示される事から、一次周波数f、極数p、すべりsを調節すれば回転数を調節できる。速度制御方式には、極数切替方式、一次周波数制御方式(VVVFインバータ等)、一次電圧制御方式(トルク制御)、二次抵抗制御方式(比例推移:巻線型のみ)、二次励磁制御方式(セルビウス方式、クレーマー方式等:巻線型のみ)の5種類がある。


■同期機

【回転子】
同期機の回転子には高速回転用の円筒型と低速回転用の突極型がある。円筒型は火力発電や原子力発電のタービン発電機に使われ、突極機は大型の水車発電機に使われる。

【電機子反作用(同期機)】
同期機は回転界磁の磁束を電機子に伝えて誘導起電力を起こして発電する。ここで電機子に電流が流れると、これが起磁力となって電機子巻線から磁束を生じ、これが界磁磁束に影響を与えて誘導起電力が変化する。これを同期機の電機子反作用と呼び、交差磁化作用、減磁作用、増磁作用がある。

【交差磁化作用】
電機子電流が界磁磁束による起電力と同相の時、磁極の片側では電機子反作用磁束の影響で主磁束が増加し、もう片側では減少する。これを交差磁化作用と呼ぶ。

【減磁作用】
電機子電流が遅れ力率の時、界磁磁束は電機子反作用磁束と打ち消し合って弱められる。これを減磁作用と呼ぶ。同期発電機は遅れ電力の消費が多いと端子電圧が下がるのでこの類推で覚えるべし。

【増磁作用】
電機子電流が進み力率の時、界磁磁束は電機子反作用磁束と重畳して強められる。これを増磁作用と呼ぶ。同期発電機は進み電力の消費が多いと端子電圧が上がるのでこの類推で覚えるべし。

【同期リアクタンス】
電機子反作用は主磁束による誘導起電力を変化させ、しかも力率に応じた動きをするので等価回路的にはリアクタンスと見做すことができる。これを電機子反作用リアクタンスxaと呼び、電機子巻線の漏れリアクタンスxlと合わせたものを同期リアクタンスxsと呼ぶ(xs=xa+xl)。短絡比と密接な関係がある。

【短絡比】
同期機の特性の指標となるもので、短絡比が大きいと電圧変動率が少なく、定態安定度(微小擾乱に対する送電の安定度)が良く、回転子が重く、自己励磁(送電側の進み電流による端子電圧の過昇や放電)が起こりにくくなる。短絡比は同期機が定格回転数・定格電圧で運転される時の励磁電流Ifvと、三相短絡時に定格電流となる励磁電流Ifiとの比「Ifv/Ifi」で定義される。この為に「無負荷飽和曲線」と「三相短絡曲線」を使う。短絡比は「K=Ifv/Ifi=Is/In=100/%Z」という長い関係があるので一気に理解すべし。

【無負荷飽和曲線】
同期機を無負荷状態で運転した時の端子電圧と励磁電流の関係を取ったグラフ。励磁電流を強くしていくと界磁鉄心の磁化飽和で主磁束が増えなくなり、端子電圧の増加が次第に頭打ちになる。

【三相短絡曲線】
同期機の端子を短絡させて運転した時の電機子電流と励磁電流の関係を取ったグラフ。この場合は電機子反作用の減磁で主磁束が飽和しなくなり、直線状のグラフになる。

【同期発電機の出力】
1相分の回路を考えると、界磁磁束による誘起電圧をE、端子電圧をV、同期リアクタンスをxsとすれば、1相分の出力はP1=EVsinδ/xsとなり、これを3倍すれば同期発電機の出力として「P=3EVsinδ/xs」が得られる。δはE,V間の相差角である。

【同期電動機】
同期発電機は同じ物を電動機としても使える。ただし電機子反作用は遅れ電流で増磁、進み電流で減磁となる。

【同期電動機の始動方式】
同期電動機を始動する時、同期速度が速すぎると回転子が追い付けない為、回転子に制動巻線を施して誘導電動機として始動する「自己始動法」、外部の電動機で加速させて始動する「始動電動機法」、低周波の別電源で始動する「低周波始動法」の3つがある。

【同期電動機の位相特性曲線】
グラフが描く形からV曲線とも呼ばれる。負荷を上げるほどグラフが上に移動する(負荷は有効電力を意味する)。負荷一定で励磁電流を増やすと進み力率、励磁電流を減らすと遅れ力率になり、いずれも電機子電流が増える。負荷一定で力率1の時、電機子電流が最小になる。


■パワー・エレクトロニクス

【電力用半導体素子】
鉄道車両や変電所等で使われる半導体。ダイオード型の素子(ダイオード、サイリスタ、GTOサイリスタ等)とトランジスタ型の素子(パワートランジスタ、パワーMOSFET、IGBT等)がある。

【ダイオード】
普通にpn接合した半導体。p型からn型に電流は流れるが、n型からp型には流れない。逆方向電圧を大きくしていくと急激に逆方向電流を通すようになる電圧をツェナー電圧と呼ぶ。

【サイリスタ】
ダイオードにゲートという端子を付け加えた半導体。アノードがp型、カソードがn型なのは変わらず、アノードからpnpnと接合し、3番目のp型にゲート端子がある。一般的に「逆阻止三端子サイリスタ」が使われ、オンオフ条件が少し複雑である。

オフ→オン … 順方向電圧+ゲート電流
オン→オン … 順方向電圧
オン→オフ … 逆方向電圧or電源停止

オフからオンにするには順方向電圧に加えてゲート電流を流す必要がある。オンの時はゲート電流を止めても順方向電圧さえあれば流れ続ける。オンからオフにするにはゲートに関係なく逆方向電圧を与えるか電源自体を止める必要がある。サイリスタのゲートはオン機能(ターンオン)のみを持つ。

【GTOサイリスタ】
サイリスタのゲートにターンオフ機能を持たせたもの。オンからオフにするにはゲートに逆方向電流を流せばよい。ゲートやベースでターンオフできる機能を「自己消弧能力」と呼び、ダイオードとサイリスタは自己消弧能力を持たない。

【パワートランジスタ】
トランジスタ系の半導体で、電力用のスイッチング素子として使われる。ベース電流を流し続けるとオン状態を維持し、ベース電流を止めるとターンオフする。

【パワーMOSFET】
電圧駆動型という省エネ仕様の半導体。ゲートに順方向電圧を与えるとターンオンする。とにかくスイッチング速度が速い。

【絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)】
MOSFETとバイポーラトランジスタ(2種類のキャリアで動くトランジスタ)を組み合わせた半導体。パワーMOSFETには劣るもののスイッチング速度が速く電圧駆動型。

【整流回路】
交流を直流にする回路。直流というと一本線のイメージしか無いが、交流の一方向を取り出すだけでも整流できた事になる。大きさが時間変化しても方向が一定であれば直流(脈流と呼ぶ)である。整流回路にはダイオードやサイリスタが使われる。

【単相半波整流回路】
交流の負方向の山を切り取って出力する整流回路。交流電源にダイオードかサイリスタが直列接続され、その先に直流負荷を直接接続しただけの単純な回路図になる。

【単相全波整流回路】
交流波形の負方向の山も正方向に整流して出力する整流回路。ダイオードかサイリスタを4つ使って整流回路が組まれ、ここから端子を引き出して直流負荷が接続される。

【直流平均電圧】
整流後の平均電圧。整流前の交流波形は実効値をVとして√2Vsinθであり、これを任意の位相角αからπラジアンまで定積分して2πで割ると「0.45V×(1+cosα)/2」という式が得られる。これが単相半波整流回路の直流平均電圧で、αはサイリスタによる制御角である。単相全波整流回路の平均電圧はこの2倍になるので、0.9V×(1+cosα)/2となる。ちなみにいずれもダイオードであれば制御角αがないので、単相半波では0.45V、単相全波では0.9Vである。

【チョッパ回路】
直流は交流ほど変圧が容易ではなく、電源電圧をチョッパ回路に入力して小刻みにオンオフする事で出力側の平均的な電圧を上げたり下げたりする。降圧用チョッパと昇圧用チョッパがあり、スイッチング素子、インダクタンス、ダイオードの配置が異なる。インダクタンスの配置を把握しておけば、スイッチング素子とダイオードの配置は一通りしか正しいものが無いので判断できる。

【降圧チョッパ回路】
交流電源側からスイッチング素子、並列ダイオード、インダクタンス、負荷を接続して構成されるチョッパ回路。スイッチONにするとインダクタンスが定常状態になれば普通に負荷電流が流れ、OFFにするとインダクタンスの磁気エネルギーから電流が過渡的に流出して負荷電圧が少しずつ下がっていく。ONにすると再び普通に負荷電流が流れ、OFFにすると過渡的な電流で負荷電圧が下がり…と繰り返し、この電圧を時間平均すると電源電圧よりも低くなる。

【昇圧チョッパ回路】
交流電源側からインダクタンス、並列スイッチング素子、並列ダイオード、負荷を接続して構成されるチョッパ回路。降圧チョッパと比べると負荷を除く3つの要素が一つずつずれる。スイッチONにすると回路が短絡状態になってインダクタンスに大きな磁気エネルギーが蓄えられ、OFFにするとその大電流が流出して負荷電圧が上がる。ONにすると再び大きな磁気エネルギーが蓄えられ…と繰り返し、この電圧を時間平均すると電源電圧よりも高くなる。

【平均出力電圧】
チョッパ回路で負荷に印加される出力電圧を平均出力電圧という。言葉が直流平均電圧と似ているが用語の違いよりも数式の違いである。降圧チョッパ回路の平均出力電圧はVda={on/(on+off)}Eで求められる。onはスイッチング素子のon時間、offはoff時間、Eは電源電圧である。昇圧チョッパの平均出力電圧はVda={(on+off)/off}Eで求められる。

【通流率】
チョッパ回路の「on/(on+off)」を通流率と呼ぶ。降圧チョッパの平均出力電圧Vdaで電源電圧Eに掛けられる係数そのものである。

【インバーター】
直流電圧を交流電圧に変換する半導体装置。逆変換装置とも呼ぶ。

【コンバーター】
交流電圧を直流電圧に変換する半導体装置。順変換装置とも呼ぶ。脈流を整える平滑回路を備えた整流回路そのもの。

【無停電電源装置(UPS)】
停電などで電源供給が絶たれても電力を供給できる装置。サーバーやパソコンのような重要設備の上流側に接続される。平常時は商用電力を整流して充電しつつ、インバータで電力変換した交流電力を供給し、商用電源の停電時は二次電池に蓄えた電力をインバータで電力変換して供給する。主回路が故障した時はパイパス回路から商用電力をそのまま供給する。

【パワー・コンディショナー(PCS)】
太陽光発電の系統連系の際、異常時に連系を切る遮断機能を持たせた保護装置や、太陽光の発電出力を昇圧するチョッパ回路、系統連系用のインバーターなどを内蔵した装置。太陽光パネルと分電盤の間に設置される。


■自動制御

【シーケンス制御】
自動車工場のロボットやエレベーターのように、予め決められた手順に沿って各段階を進めていく自動制御。自動車工場であればロボットアームを所定位置に移動し、溶接し、コンベヤーを一定距離動かす。半導体工場の製造ラインもチップを所定位置でハンダ付けするシーケンス制御である。エレベーターであれば呼び出しボタンが押されるとそのフロアにケージを昇降し、行先フロアを指定してドアを閉めると巻上機が動作してそのフロアに自動で昇降する。自販機もお金を入れて商品を選ぶと下の取り出し口に商品を出すというシーケンス制御である。

【フィードバック制御】
エアコンや冷蔵庫のように、設定値とのズレを検出して制御側に結果を戻して修正する事で設定値を維持する自動制御。制御信号は基本的に設定部、調節部、操作部、制御対象、ここで外乱をフィードバックして検出部に送られ、設定部と合流して原因が修正される。

【フィードフォワード制御】
フィードバックは制御後に外乱を受け取って原因に戻すが、制御前に外乱を検出部に送り、外乱ありきで操作する方式をフィードフォワード制御という。

【比例制御】
PIDフィードバック制御の一つで「P制御」ともいう。PはProportionalの頭文字で比例の意味。目標値との偏差が大きいほど制御量を大きくするので、偏差が目標値に近づくにつれて制御量が減り、その後はいつまで経っても目標値に到達できない。このどうしても埋められない偏差を定常偏差と呼び、積分制御や微分制御で制御量の修正を行う。(=PID制御)

【PID制御】
定常偏差の時間積分がある大きさになった時点で制御量に加える「積分制御(I制御)」を組み合わせると、比例制御で残る定常偏差を解消できる(定常特性の改善)。ただしI制御では偏差の積分に時間経過量を必要とする為、この制御遅れを改善すべく目標値をオーバーシュートする勢いで制御量を大きくして過渡特性を改善し(D制御)、積分制御と組み合わせて定常偏差を短時間に解消させるPID制御が行われる。I制御はIntegral(積分制御)、D制御はDifferential(微分制御)の頭文字である。

【伝達関数】
入力信号に対する出力信号の比を伝達関数G(s)と呼ぶ。ブロック線図において信号の変換は入力信号と伝達関数の積で表現され、入力信号の係数のように掛けられる部分が伝達関数となる。信号の合流点では和を取る際の符号が記され、-の合流点では-符号で和を取らなければならない。

【ゲインと位相】
正弦波の入力信号に対し出力も正弦波であるような制御において、入力信号に対する出力信号の比をゲインと呼ぶ。伝達関数G(s)はラプラス変換領域のもので、時間領域に変換するとG(jω)という形式になる。ゲインは「g=20log10|G(jω)|」で求められる。時間領域の伝達関数G(jω)の絶対値に関し、その常用対数を取って20倍したものなので、伝達関数G(jω)さえあればゲインを算出できる。さらに入出力の信号の位相差を「θ=∠{G(jω)}」で求められる。


■情報伝送・処理

【進数変換(10進数→2進数)】
0から9のみを使い、9の先は位を上げて10とする数え方を10進数という。これに対し0から1のみを使い、1の先は位を上げて10とする数え方を2進数という。10進数を2進数に変換するには、例えば10進数の17を2で割って余りを出し、17が0になるまで計算を続けて余りを下から読むと2進数にできる。17/2=8余り1、8/2=4余り0、4/2=2余り0、2/2=1余り0、1/2=0余り1なので、10001となる。

【進数変換(10進数→n進数)】
この場合も同様に、例えば10進数の14を3進数にするには、14を3で割って余りを出し、14が0になるまで計算を続けて余りを下から読めばよい。14/3=4余り2、4/3=1余り1、1/3=0余り1なので、112となる。したがって10進数をnで割ればn進数に変換できる。

【進数変換(2進数→10進数)】
例えば2進数の110100を10進数にするには、2^5、2^4、2^3、2^2、2^1、2^0をそれぞれの桁に掛けて合計すればよい。32×1、16×1、8×0、4×1、2×0、1×0なので、32+16+4=52となる。

【進数変換(n進数→10進数)】
n進数の1011を10進数にするには、n^3、n^2、n^1、n^0をそれぞれの桁に掛けて合計すればよい。

【論理回路記号】
0と1のみで演算を行う回路を論理回路という。ブロック線図で信号の伝達関数をブロックで表したように論理回路で論理演算を行う部分は6種類のコンセントのような記号で表される。AND、OR、NAND、NOR、NOT、XORがある。

【AND回路、OR回路】
AB=Yという論理式で演算を行う回路をAND回路と呼び、A,Bが共に1の時Y=1、A,B何れかが0の時Y=0を出力する。確率統計の論理積「かつ」と同じ考え方である。また論理式「A+B=Y」で演算を行う回路をOR回路と呼び、A,B何れかが1の時Y=1を出力する。確率統計の論理和「または」と同じ考え方である。AND回路の記号はアルファベットのDのような形で、OR回路の記号はカニの手のような形のコンセントで描かれる。(さすがに図示した方がいいか)

【NOT回路】
A^=Yという論理式で演算を行う論理回路をNOT回路と呼び(A^はAの上に横線を引いた表記)、A=1の時Y=0、A=0の時Y=1というように入力の逆の結果を出力する。NOT回路の記号は三角形のコンセントの先端に点のような丸を付けたような形で描かれる。

【NAND回路、NOR回路】
AND回路の出力をNOTで否定する回路をNAND回路と呼び、A,Bが1,1の時Y=0、A,Bが0,1の時Y=1を出力する。OR回路の出力をNOTで否定する回路をNOR回路と呼び、A,B何れかが1の時Y=0、A,Bが共に0の時Y=1を出力する。NAND回路の記号はAND記号の先端に点のような丸を付けたような形で描かれ、NOR回路の記号はOR記号の先端に点のような丸を付けたような形で描かれる。

【XOR回路】
これまでの5種類とは毛色が異なり、A,Bが等しければ0、等しくなければ1を出力する。排他的論理和回路と呼ばれる。論理式は「(A^・B)+(A・B^)」というもので覚えにくいが、A,B,Yの合計が偶数になるという覚え方もある。XOR回路の記号はカニの手のようなコンセントのA,B側が二重線になったような形で描かれる。

【真理値表】
入力に対する出力を入力パターンごとに纏めて表にしたもの。1と0だらけで見るのが苦痛。

【カルノー図】
カルノー図を使うと真理値表から論理式を導出できる。真理値表で出力Y=1となる入力を全てカルノー図に転記し、1辺が2セルの整数倍の領域で囲んだセルで入力変数の共通部分を探る。0であればNOTとして単項式を作り、それぞれの領域で得られた単項式を足し合わせれば論理式が得られる。


■電動機応用

【慣性モーメント】
重くて回転半径の長い回転盤には大きなエネルギーを蓄えることができる。このような装置をフライホイール(はずみ車)と呼び、「質量×半径の2乗」で定義される回転エネルギーの比例定数を慣性モーメントと呼ぶ。発電所の蒸気タービンにも莫大な質量による慣性モーメントがあり、負荷変動に対しある程度の強さがある。

【回転エネルギー】
回転物体が持つエネルギー。慣性モーメントをJ、回転角速度をωとすると「W=(1/2)Jω^2」で計算できる。

【エレベーターの動力計算】
エレベーターは乗りかご(ケージ)をロープで吊って頂部の機械室の巻上機(誘導電動機)を通し、反対側にはつり合い重りを吊り下げている。つり合い重りがないとケージと乗員の重量をすべて巻上機だけで昇降させなければならず、ケージと同程度の重さを持つ錘をつり合い重りとして反対側に吊り下げている。巻上機が必要とする出力は電動機の機械的効率η、ケージ質量mc、乗員質量ml、つり合い重り質量mw、昇降速度vを使って「W[kW]={9.8(mc+ml-mw)v}/1000η」で求められる。

【揚水ポンプの動力計算】
低い位置から高い位置に水をポンプでくみ上げる事を「揚水」と呼ぶ。ポンプ電動機が必要とする出力は、流量Q、有効揚程H、余裕係数k、電動機効率ηを使って「W[kW]=9.8QHk/η」で求められる。

【有効揚程】
揚水すべき高低差。幾何学的に見て明らかな揚程を総落差と呼び、これに水力発電でいう損失揚程を"加える"と、揚水ポンプが行うべき仕事として有効揚程が得られる。損失揚程を+で足しているのは違和感があるが、これは落差を利用して"発電"するのであれば引き算であり、揚水は電動機がポンプを動かして仕事をする為、損失が加えられる。

【MKS単位系】
長さ(メートル:m)、質量(キログラム:kg)、時間(セカンド:sec)を基本的な次元とする国際単位系の一種。質量がgではなくkgを単位としているのが大きな特徴で、例えばF=maで質量mの単位は[kg]だが力Fの単位は[kN]とはならない。MKS単位系では[N]=[kgm/s^2]と定義して物理法則を記述する。水力発電の理論出力P=9.8QHも流体力学のナビエ・ストークス方程式も元を質せばF=maであり、質量を用いる計算の結果は見かけ上1/1000倍される。特に機械分野で度忘れのような計算ミスに繋がりやすい。


■照明計算

【立体角ω(sr:ステラジアン)】
角度というと主に平面で線分を2つ交わるように引いた時に両者が成す角をいうが、点光源から発せられる光(或いは点電荷による諸量)のような現象では立体的な角度の定義が必要になる。単位球の中心で平面角θが0[rad]からθ[rad]まで動く時、母線の長さを1、底面円周を2πsinθとする円錐が切り取る単位円の表面積で立体角を表現する。定積分を求めると「立体角ω[sr]=∫[0~θ]2πsinθdθ=2π(1-cosθ)」となり、これが平面角θに対する立体角となる。θの有効範囲は180度で、この時の立体角は4π[sr]なので、立体角の最大値は4π[sr]となる。

【光束F(lm:ルーメン)】
ここから照明計算の似た概念が5つ登場する。点光源から全方位に照射される光の束のような概念を光束と呼び、磁束や電束のイメージに似ている。もう少し詳しい定義だと「全方向に対し1カンデラの光度を持つ標準の点光源が1[sr]の立体角内に放出する光束を1[lm]とする」となる。要するに光束とは立体角に光度という量を掛けて得られる量といえるが、カンデラ(=光度)を知らないとまるで意味不明である。光束の量記号はF、単位は[lm](ルーメン)と書く。

【光度I(cd:カンデラ)】
点光源から単位[sr]に放出する光束を光度と呼ぶ。そのまま式にすると「光度=光束/立体角」なので「I=F/ω」となる。これに立体角を掛けると光束なので、光束の単位はcdsr(カンデラ・ステラジアン)と呼べそうだが、実際はそう呼ばれずルーメンと呼ばれる。光度I[cd]は車のヘッドライトのスペック表記などに使われる。

【照度E(lx:ルクス)】
受光面を照らす光束を照度と呼ぶ。受光面の面積をSとすれば「E=F/S」で求められる。点光源の場合、同じ次元で単位が[cd/m^2]になる。(法線照度Enを参照)

【輝度L(cd/m^2)】
光束F、光度I、照度Eは点光源で定義されていたが、輝度はモニターや照明の形状を計算に取り入れる。輝度は人間から見た光の眩しさで、人間から見た時の見かけの面積をS'とすれば「L=I/S'」で求められる。光源が半径rの球体であれば半径rの円、断面半径rの蛍光灯のような円柱であれば縦2rの長方形となる。

【光束発散度R(lm/m^2)】
これで5つ目である。発光面から発せられる光束の強さを光束発散度という。照度と同じ単位で違いが分かりにくいが、照度は光源によって照らされる面に注目した量であるのに対し、光束発散度は光源自身に注目した量である。

【完全拡散面】
発光面をどこから見てもその輝度が変わらない時、その発光面を完全拡散面という。輝度の定義は「光度÷見かけの面積」なので、視点によって光度が弱くなったとしても見かけの面積が小さくなれば輝度一定なので完全拡散面となる。この文言が出た時、地味に重要なのが次の公式である。

【R=πL】
日本語にすると「光束発散度=π×輝度」である。点光源の光度I=F/4πを輝度L=I/S'に代入してL=F/4πS'。これに半径rの見かけの面積S'=πr^2を代入してL=F/(4π^2×r^2)となりπL=F/4πr^2。点光源から半径rの球面積をSとしてπL=F/Sとなり、F/Sは点光源自身の[lm/m^2]なので光束発散度を意味する。したがってπL=光束発散度すなわち「R=πL」が得られる。完全拡散面という文言とセットで覚えておく必要がある。

【法線照度En(lx:ルクス)】
光源から発せられる光のベクトルと垂直な面の照度。点光源から発せられる光にとっての受光面は球面状なので照射距離をrとしてS=4πr^2とすればE=F/4πr^2、全方位への光束FはIω=I4πなので「E=I/r^2」となり、照度Eは照射距離rの2乗に比例して弱まる事になる。単位は相変わらず[lx]だが分子が光束F[lm]から光度[cd]に変わるので狼狽えてはいけない。

【水平面照度Eh(lx:ルクス)】
蛍光灯が天井にある時、その真下の床ではなく少し横に離れた位置の床における照度を水平面照度という。蛍光灯から真下に向かう光を基準とした角度を入射角θとした時、水平面照度Ehは「法線照度×cosθ」で求められる。幾何学的関係が三角関数のようにすべて相対的なので、しくみで理解しなければならない。

【鉛直面照度Ev(lx:ルクス)】
水平面照度は天井に蛍光灯がある時の床における照度だが、壁における照度を鉛直面照度Evという。Ev=法線照度×sinθで求められる。

【屋内照明計算】
部屋の床面積Aが与えられる時、天井に設置される照明器具の光束は照度Eを用いてA×Eで与えられる。その場所が教室や会議室のように複数の照明で照らされる場合、照明一つの光束をF[lm/個]、台数をN[個]とすると光束の総量はF×Nとなる。両者を等式で結ぶとAE=FNとなり、さらに照明器具はホコリや汚れに由来する照明効率の低下(保守率)や、部屋の色調による照明効率の低下(照明率)がある為、これらをまとめてηと置けば「AE=FNη」となる。この公式を使うと屋内の照明を計算できる。保守率と照明率の積を纏めてηとは置いたがそれでも文字が多い為、光束F、光度I、照度E、輝度L、光束発散度Rをスラスラ言える前提でこの計算の理解と実践に挑むべし。

【視感度】
人間の目が光を光として感じる度合いを視感度という。光は目に見えないが特定の波長(380nm~760nm)であれば見ることができる。プリズムを通した太陽光や虹の色を可視光線と呼び、555nm付近の黄色や緑の可視光が最も視感度が高い。

【波動の速度】
高校物理の波動分野で習う「v=fλ」。交流回路の電気波形のような時間依存だけの波ではなく、電磁波や水の揺れによる波のように、時刻と位置に依存して動く波の計算で使う。

【ステファン・ボルツマンの法則】
あらゆる波長の電磁波を全て吸収し、同じだけの電磁波を放射できる理想的な物体を黒体という。黒体が放射する電磁波のエネルギーは黒体の絶対温度の4乗に比例し、これをステファン・ボルツマンの法則と呼ぶ。ステファン・ボルツマン定数をσとすると黒体の放射強度J[W/m^2]は「J=σT^4」で示される。放射強度の単位が見慣れないが、太陽光発電の一次エネルギーが面積1平方メートル辺り1kW程度というのは、放射強度が1000[W/m^2]である事を意味する。

【ウィーンの変位則】
最大エネルギーを放射する電磁波の波長をλm、その時の黒体温度をTとすると「λmT=b」の関係がある。bは係数で、黒体の絶対温度Tが上がるにつれて波長が短くなる様子を表す。


■電気化学と電熱

【比熱】
1kgの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量。計算式というよりは一つの量で、比熱cの単位は[J/kgK]となる。重さをgで表すこともある。

【熱容量】
比熱に質量を掛けると、その物質自身を1℃上げるのに必要な熱量となる。これも計算式というよりは一つの量で、熱容量Cの単位は[J/K]となる。比熱とはC=mcの関係がある。温度変化量をΔtとすると、熱量Q=CΔt=mcΔtの関係がある。要暗記である。

【熱オームの法則】
電気回路のオームの法則のアナロジーで磁気回路という概念があったが、熱の動きもオームの法則のように考える事ができる。温度差をθ[K]、熱流をI[W]、熱抵抗をRt[K/W]とすると「θ=IRt」が成り立つ。Rtは電気回路における導電率のアナロジーで熱伝導率λという量を導入するとRt=L/λSの関係が成り立ち、熱流が通る場所の断面積Sに反比例し、移動距離Lに比例する。

【電気加熱】
電気を使って加熱するしくみには5つほどある。ジュール熱で加熱する抵抗過熱、アーク放電を利用するアーク加熱、IHなどでも利用される金属の鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)による交流のジュール熱で加熱する誘導加熱、赤外線を当てて加熱する赤外線加熱、誘電体に高周波電圧を与えて誘電体内の双極子を反転させて周囲の分子との間に摩擦を起こし、この誘電損失による発熱を加熱に利用する誘電加熱などがある(電子レンジなどに利用)。

【ファラデーの電気分解の法則】
電気分解で析出される物質w[g]は、ファラデー定数を1/96500[mol/C]、原子量をm、原子価をn、電気量をQとすれば「w=(1/96500)×(m/n)Q」で求められる。これをファラデーの電気分解の法則という。化学的で難しいが、原子量はモル質量[g/mol]にほぼ等しく、原子価は無次元量と考えられるので、次元をすべて記せば「w[g]=(1/96500)[mol/C]×(m[g/mol]/n)×Q[C]」と書ける。電気量Qは電流と時間の積なのでQ=Itである。ファラデー定数の単位が[mol/Ah]で与えられる時は電気量Qを1/3600倍しないと量が合わないので注意しなければならない。ただし幾つかの元素の原子価を覚えないとこの公式を使う事すらできない。

【原子価】
電気分解に関わる元素の原子価を知らないとファラデーの電気分解の法則が使えない。水素、酸素、塩素、窒素、ナトリウム、アルミニウム、亜鉛、銅、リチウムなど9種類ほどある。覚え方だが…、水素が1価の陽イオン(つまり1+)である事を知っていれば、酸素はH2Oより2-、銅はCuOより2+、亜鉛はZnOより2+、窒素はNH3より3-とわかる。ナトリウムも1価の陽イオン(つまり1+)である事を知っていれば、塩素はNaClより1-とわかる。アルミニウムはボーキサイトの化学式Al2O3より3+と分かるが暗記の方がよいかも知れない。リチウム(1価)は化学式で考えづらいので要暗記。

 

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