夢を見た。
私は駅のプラットホームにいて、かなり慌てていた。
すでに駅に着いていた電車に飛び乗った。
まもなく発車いたします、とアナウンスが聞こえた頃、
ゆっくり閉まるドアの外側で、次の電車を待つ女の人達の会話が聞こえた。
「ほんとに紛らわしいわね。間違って乗るところだったわよ」
「ほんとに。逆方向に行くところだったわ」
私は慌てて、閉まっていくドアに体をはさみ、何とか降りようとするのだけど、降りることができない。
あと少し、ほんの少し、力でドアを押し広げることができれば降りられるのに。
電車は発車してしまい、呆然としたまま私は立っている。頭上に中吊り広告が揺れる車内で。
駅に着いた。隣の駅(逆方向の)に着いたはずなのに、長いこと乗っていた気がする。
今度は確実に目的地に向かう電車に乗ろうと、別の電車に乗り込む。
車内に貼ってある路線図を見て、私は再び焦りはじめる。
知っているはずの駅名がない……見覚えのある駅名が一つもない。一体、どこに向かっているんだ。
着いたのは寂れた駅で、無人だ。
ずいぶん遠くに来てしまった。土ぼこりのする風の匂いや、町の音がとても静かなので、それがわかる。
次の電車は、全く来そうもない。
仕方が無いので、その駅で降りてぶらぶらとすることにした。
しばらく町を歩いていると、駅への方角がわからなくなってしまったので、
道端で一人で遊ぶ、前髪を下ろした小学生ぐらいの男の子に聞くことにした。
「駅はどっちなの?」
「こっだよ。こっち、こっち」
うながされるまま、歩いていくと男の子は言った。
「ほら、着いたよ。ここだよ」
着いたのは駅ではなく、温泉だ。
『天然温泉』と書かれた、赤いノボリが風にはためいている。
私は子供に非難を浴びせることも無く礼を言って別れ、温泉に入ることにした。
湯船につかり手ぬぐいを頭にのせ、幾人かの温泉客と一緒にくつろいでいる私。
でも決して、くつろぎきってはいないのだ。
私は不安になる。どんどん不安になっていく。
そして、夢からようやく目が覚めた。
汗でびっちょり。