又吉直樹さん著 人間 を読み終えました。
意外な展開で、
意外なまま穏やかに終わりました~
こういう小説はあまり読んだことのない展開だったので、
そのせいか、不完全燃焼というか、どこかで前半の劇的な怒涛の展開を締めくくるにふさわしい、もう一つのエンディングが後半に繋がり、あるのではないのかと、求めてしまう自分がいました。
例えば「帰省して
母、父と後半の家族との思い出を振り返ったり、祖父母と自分を重ね合わせたり、
そういった穏やかなゆったりと時間を噛み締めることができる時間。
現在から過去に遡りつつ、また現在に戻る展開を通じて自我と祖先との繋がりを感じられるという終始穏やかな作品。」
これが人間の後半部分にあたる部分ですが、これが一つの作品として完成しているものはよくあります。この場合は、壮年期、老後の生活や視点が含まれていたりするので、結末に分かりやすさがあります。
また、前半のように青春の激動期をメインにしたストーリーも良くある。
恋愛であれば成熟するなり、しないなりの結末が用意されている。友情であってもなんらかの和解であったり、次に繋がる希望が描かれて終わる。
この二つを緩急をつけ、組み合わせて、一つの本にまとめるという試みが新しく、私のようにアラフォーというある程度年齢を重ねた中年期
自分の青春期を客観的に見る余裕がありつつも、まだ壮年期に至らない、悟りを拓くには早い。人間として未熟さもある。
どう変化していくのか分からない不確かさもあるが、社会的な立場はある程度確立され、過去の両親と自分を重ねられるようになる。
そういった感覚。
30代~40代独特の不思議と穏やかな感覚を、実はそのままの形で切り取り、表現できている作品と、なっているのではないかと思いました。その点でとても新しく貴重だと思いました。
どうしても、老後の視点から過去の時代を振り返ると、美化されているのか、曖昧さや完成されすぎて現実離れした違和感を感じる作品となる。
青春期のみを切り取った作品だとこの主人公の青年または女性の、穏やかだった幼少期や中年期というのはどうだったのかと、また別の一面について知りたくなる。
それは 常に激動の人生の人間は考えにくく、劣等感が強い時期の、主人公からの視点の表現だけでは、キャラクターが客観的に掴むことが難しいからです。
多様な経験や時期を経て変化していく中でも一貫性があるという、何らかの人物像が浮かび上がる。それが人間ではないか。
人生には 春もあれば夏もあり、秋もあれば冬もある。
車の景色をよく見るようにと言う父の言葉。
そして、曾祖母のように、独特の感覚で景色や体験を捉える主人公。
人生における
春や夏だけでなく秋に差し掛かり、冬を思う、そんな季節の美しさを受け入れるような視点の作品だったと思う。
眩しく激しい痛みも伴う力強い青春期を春や夏、秋に差し掛かり安定しながらも懐かしい郷愁もある、今現在の視点。
いつか訪れる人生の冬に備えるという心の穏やかさ。
様々な季節を思うからこそ、その強さを持つことが出きるのだろうなと感じました。
拙い部分や歪な部分が、それぞれのキャラクターに存在していて、その不器用さも器用さも、どこか読者である自分にも内在しているようで、それぞれのキャラクターを愛おしく感じられました。
作者の人に対する鋭い観察力と、愛情、また変化しつつ生き続ける強さが感じられる作品でした。
皆様もぜひ一度お時間のあるときに新しい物語を、体感してみると楽しいと思います。
そして、主人公と平行して生きる。自分の物語の続きを、珈琲を入れてパソコンのスイッチを入れて、呼吸を置いてい穏やかに始める。
今も各地の明かりの元で、様々な人の一日が始まり、この、主人公もまた生きている。
不完全ながらも、呼吸を感じる。そんな、新しい視点の「人間」。
人間との出会いや体験に、複雑な気持ちを重ね合わせながら、感謝を感じられるのではないかと思います。