まさきとしかさんの、【あの日、君は何をした】
を読んだので感想を書きたいと思います。
先日ひめの通院の時に、電車の待ち時間に本屋さんに寄って、いい本あるかなーと見ていたら、でかでかと広告打たれていたから見つけたので、本屋さん売上一位!
ということでした。ミステリーとかサスペンスとか好きなんです、、、。
似ているけど推理小説は苦手です。推理するのは好きじゃないんです。なぜなら空き時間にちょこちょこ読みするから、途中でどこがどうだったのか、細かい点を忘れてしまうから。(笑)
ちらっと立ち読みしたら冒頭でこれよさそうと思ったので、購入してみた次第です。
ネタバレ含まれると思います。
(注意してごらんください~
)
やっぱり一番深い描写が多かったキャラクターはいづみさんかなと思います。
前半読み進めるうちは、犯罪の被害者、遺族だけでなく、一つの事件にいろいろな形で巻き込まれた人たちを、描くものだろうと思っていました。
【ここからネタバレ】
しかし実は、被害者と思われていた人もある犯罪に手を染めていたりします。(不倫とかは犯罪とは呼べないですね)
まぁ、命を落として償うというか、その展開は全然【違う】
【やりすぎだ】【納得できない】
という もやもや が読者の心に残るような結果だと思います。
これですっきりしたね!なんて人はたぶんいないと思います。背景や、関わる人たちについて描かれています。
亡くなったいづみの息子さんや、また息子さんがこっそり殺害した男性の方(結婚詐欺師の人かな)もまた、生きていれば
被害者の方や周りの方とのすれ違いを解消できたかもしれず、関わってきた人たちが何らかの心の整理をする時間を作れたかもしれないと思いました。
また犯罪者にも家族がいる、その人を大切に思う人がいる。(それが自己愛を含む感情だろうと)失うことで、二度と対面出来ない過去となることで、狂う人生がある
という強いメッセージが感じられました。
永遠に失うということは、その人と関わる人たちの人生を止めてしまうことなのかもしれないと感じました。一つの物語のページを閉じるように。
ひとりの人を失って、またつづきを進めるには
また別の本を開くようなものかもしれない。そう感じました。
狂う、という言葉から 連想するのは狂気であったり、または【受け入れられないことを受け入れるという大きな変化】であるのではないか
と思うんですが
一番気になったのは
果たしていづみは本当に【狂】っていたのか
という点でした。
傍目から見ると人生をかけて失った息子さんの死を受け入れられず、生きることを拒絶するように過ごすこと
は狂っている としか見えなかっただろうと思います。
でも、いづみさんの人生を全体を通して見たときに果たして彼女の価値観や、人生観は狂っていただろうか。方向転換したのだろうか。
そうして見ると、とても一貫性があったと思います。
つまりいづみさんは、彼女の中では【狂気】では無かった。
いづみさんが息子さんを失ったショック状態と鬱状態を抜け、最終的に救いを求めたのは【輪廻転生】の本と出会いでした。有名な精神科医が書いた本ということで、その本の内容に感銘を受けると共に、信じる、納得することが出来たそうです。
【著名な作家さん、研究者、有名な医師、社会的な成功者】など
自分の行動、人生の根拠とする本には、それなりの納得できる要素を求める、という点も
とてもいづみが常軌を逸しているようには思えず、さらには息子さんの生前の手紙を基に野ヶ子さんに接近する際の作戦もほとんど抜かりなく冷静でした。そしてコンビニでアルバイトもして、生計を立てていました。社会とも接点があります。
客観的にみて異常には見えなかったと思います。
しかし、亡くなられ、突然意味も分からず日常から姿を消した息子さんへの思いの強さ、生きていることへの執着。なぜなのだという思い。どこにもぶつけることの出来ない怒り。
この矛盾をつなぐものが彼女にとっては輪廻転生であり、そして
【生きること】【生きていること】への執着を、手放すことでしか、息子さんの死を受け入れることが出来なかった。
家族の存在は、いづみさんにとっては、生きることそのものだったのだと思います。(夫と娘さんはどこへやら、、、)
母として、いづみさんの、気持ちが分かるような気がする分
しっかり生きることで どこかで別の選択に気持ちが向かなかったのかと悔やまれます。
母として強くなくてはならない、妻としてしっかりしなければいけない、明るくいなければならない。その気持ちが私を支えている部分もあります。
だからこそ、悲しみを一度手放して 冷静になってからしっかり供養する、という段階が必要であったと思います。
辛いときは誰しも訪れると思いますが、最悪のときにそれを乗り切るためには相当なエネルギーがいると思います。
だからこそ、時間が必要だと思います。
そして、心理的にも物理的にも支えとなれる存在が、息子さんの他にも 必要だったのではないかと思います。
親子のゆがんだ愛の形、と言う視点なのか、難しいことはよく分かりません。
【歪んでいないものがこの世にあるのだろうか。】
愛が深いからこそ、重いからこそ、時には行き過ぎることもあるだろうし、後悔することもあるだろう。けど
だからこそそれを修正しながら、いい方にいい方に進めるように努力しなければいけないのではないか。
それが愛情なのではないかと思いました。
命の重さを感じさせてくれる素晴らしい本だと思います。
おしまい
