★博物館レポート★
<未来へ生きる私たちへのメッセージ>


国立科学博物館で開催中の大絶滅展、スペシャルナビゲーターは、アーティストとして活躍する福山雅治さんです。
写真家でもある福山さんは、この展覧会の第二会場で、ガラパゴス諸島やインドなど、世界各地で撮影した27 点の写真を展示しています。
絶滅の危機に瀕していながらもたくましく生きる生物の写真は、迫力があり生命力を感じさせます。

 

■第二会場展示風景

 

福山さんのアーティスト活動の原点には、幼少期の原風景-祖母が営んでいたみかん畑があります。
農家に嫁いだ福山さんの祖母は祖父が早くに他界した後、5 人の子どもを育てながら農業を続けました。
そのように生きる祖母の姿をそばで見てきた福山さんにとって、自然は「豊かでありながらも、生きていくのが大変な場所」でした。

 

■福山雅治さん(報道発表会)

 

福山さんの写真作品からは、命の循環や生物の営みのはかなさが浮かび上がります。
福山さんは「地球が進化を続ける中で、多くの生命は絶滅を繰り返してきた。残ったものには意味があるのでは」と語ります。
歳を重ねる中で「自分は何のために生き、何を残せるのか」と考えるようになったという福山さん。

 

■第二会場展示風景

 

福山さんは、祖母はみかん畑で自分の“作品”を生み出していたのかもしれないと思うそうです。
そこにルーツがある今の自分は「生かされている」存在ではないか。
そう考えたとき、福山さんはこの地球上で自分は何をしていくべきなのかを見つめ直すきっかけになったと言います。


■新生代の植物進化

 

大絶滅展の会場には、絶滅した生物や植物の化石などが映像も交えて展示されています。
化石の発掘やクリーニングなど、研究者たちの調査の裏側が垣間見れる意外な展示もあり興味深いです。

 

(手前から)■トリケラトプス (頭骨) Triceratops sp.
白亜紀末期 (マーストリヒチアン期)
アメリカ
恐竜類鳥盤類角竜類
レプリカ
国立科学博物館蔵
■ティラノサウルス (頭骨)
Tyrannosaurus rex
白亜紀末期 (マーストリヒチアン期)
アメリカ(モンタナ州)
恐竜類竜盤類獣脚類
レプリカ
国立科学博物館蔵

 

また、福山さん自身がナレーションを担当する音声ガイドが用意されており、まるでラジオ番組を聴くように楽しめます。
音声だけでも情景が浮かぶよう構成されており、かつて存在した生命の世界をより深く感じることができます。

 

(奥)■スタンジェロチャンプサ (全身骨格)
Stangerochampsa sp.
白亜紀末期 (マーストリヒチアン期)
アメリカ(モンタナ州)
シュードスキア類ワニ類アリゲーター類
レプリカ
国立科学博物館蔵
(手前左)
■バエナ類(全身骨格 [頭部以外])
Baenidae gen. et sp. indet.
白亜紀末期 (マーストリヒチアン期)
アメリカ(サウスダコタ州)
カメ類側潜頸類バエナ類
実物
国立科学博物館蔵

 

"大絶滅"と聞くと、少しネガティブな出来事のように思えます。
しかし、過去に断絶していった生命体を知ることで、今を生きている私たちができることを考えるきっかけになるでしょう。

 

■レドンダサウルス(全身骨格)
Redondasaurus gregorii
三畳紀後期
アメリカ (ニューメキシコ州)
主竜形類フィトサウルス類
レプリカ
骨格
福井県立恐竜博物館蔵

 

(本文中の写真は特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」の報道発表会・内覧会時に主催者の許可を得て撮影しました。)


■特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」
Special Exhibition: Mass Extinctions―BIG FIVE
会期:2025 年11 月1 日(土)-2026 年2 月23 日(月・祝)
会場:国立科学博物館(東京都台東区上野公園7-20)
詳細:https://daizetsumetsu.jp/

 

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