★美術館レポート★
<テオからヨー、そして息子へと受け継がれた情熱>
オランダ・アムステルダムのファン・ゴッホ美術館といえば、世界最大のゴッホコレクションで有名ですよね。
実はこの美術館、できるまでに画家の没後80年以上かかっているんです。
物語は1890年、ゴッホが亡くなったところから始まります。
ゴッホの作品は弟テオが相続しました。
テオは、ゴッホの絵画やふたりで収集した作品だけでなく、 兄から18年にわたって届いた手紙の多くを保管していました。
しかし、わずか半年後にテオも他界します。
テオの妻ヨーが残された作品と手紙を大切に守りつつ、計画的に売却してゴッホの名を広めていきました。
あのロンドンのナショナル・ギャラリーの《ヒマワリ》も、ヨーが「ゴッホの栄光のために」送り出したものなんです。
■フィンセント・ファン・ゴッホ 《ボートの浮かぶセーヌ川》 1887年5月中旬-6月下旬
個人蔵
その後、テオとヨーの息子、フィンセント・ウィレムがコレクションを散逸しないよう財団を設立し、1973年に国立フィンセント・ファン・ゴッホ美術館(現ファン・ゴッホ美術館)が誕生しました。
■フィンセント・ファン・ゴッホ 《画家としての自画像》 1887年12月-1888年2月
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
ゴッホとテオは、1880年代後半からは浮世絵や同時代の画家の作品も集めて、充実したコレクションを築きました。
ゴッホが夢中になった浮世絵は、彼の色づかいや構図に大きく影響していて、アルル移住後の作品にも深く反映されています。
■三代歌川豊国(歌川国貞) 《東海道名所風景 日本橋》1863(文久3)年
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
今回の展覧会では、絵画・素描・手紙に加え、こうした背景を示す資料や同時代作家の作品も展示。
コレクションがどのように保存され、戦略的に世界へ発信されたのか、その過程と美学に触れられる貴重な機会となるでしょう。
(本文中の写真は「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」の報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)
■ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
会期:2025年9月12日(金)ー12月21日(日)
会場:東京都美術館
(東京都台東区上野公園8-36)
開室時間:9:30ー17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
※ただし10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開室
※土日、祝日および12月16日(火)以降は日時指定予約制
詳細:https://gogh2025-26.jp/
■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では展覧会情報を掲載しています。