★美術館レポート★
<化ける、着る、笑わせる>

***動画でも見られます(展覧会終了日まで)***

現代の猫ブームが度々話題になりますが、実は江戸時代から猫は人々の身近な存在であり、アートの中でも大きな役割を果たしていたようです。
今回の展覧会では、浮世絵の中で生き生きと描かれた猫たちに出会えます。



会場には猫にまつわるコラムが多数展示されています。
日本に猫が渡ってきた経緯や、平安時代に天皇が大切に育てていたエピソード、江戸時代の庶民が赤い首輪や鈴を付けて猫を可愛がっていた様子などを知ることができます。



中でも、猫好きで知られる浮世絵師・歌川国芳の作品は注目です。
代表作《其まゝ地口 猫飼好五十三疋(そのままじぐち みょうかいこうごじゅうさんびき)》では、東海道五十三次の宿場名が、猫のしぐさや宿場名の洒落に置き換えられています。55匹もの猫たちの表情や動きが細やかに描かれ、ユーモアだけでなく完成度も高い作品です。



しかし、展覧会は可愛い猫だけでは終わりません。
江戸時代や明治時代の人々にとって、猫は神秘や怖さも宿す存在でした。
たとえば長生きした猫が化けて人間になる「化け猫」や「猫又」は、妖怪として芝居や絵にたびたび登場します。



中には、役者の顔に似せて描かれた“猫の百面相”や、擬人化された猫たちが町人や遊女として登場する風刺画も。
猫が社会の鏡のように扱われていたことがよく分かります。



また、明治時代の浮世絵というと鮮やかな赤が特徴的です。
これは、幕末から明治時代にかけて輸入され、 安価で発色が良い人工染料のアニリンを使用したもので、 赤は文明開化を象徴する色となりました。



人と身近な存在であった猫たちも擬人化され、洋服を着たり蒸気機関車に乗ったりと、文明開化の波に乗る姿はとてもユーモラスです。
浮世絵の中で自由に描かれる猫の姿から、猫というテーマが持つ奥深さを感じ、創作のインスピレーションが得られるでしょう。



(本文中の写真は「Ukiyo-e 猫百科 ごろごろまるまるネコづくし」の内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)

■Ukiyo-e 猫百科 ごろごろまるまるネコづくし

会期:2025年7月19日(土)-9月2日(火)
会場:そごう美術館
住所:神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階
時間:10:00-20:00 *入館は閉館の30分前まで。
(そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合があります。)
休館日:会期中無休
詳細:https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

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