これは鮨屋ではありません。どう見ても鮨屋ですが。

 ということで現在東京京橋のBAGで開催中の落合陽一さんの個展『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン』を観てきました。



 このどう見ても鮨屋なのれんをくぐると、やはり見事な白木のカウンターが出現します。やっぱりどう見ても鮨屋じゃないかと思いますが、残念ながら鮨は食べれません。奥の厨房に行くと、そのからくりがわかります。



 そこに置かれているのはオシロスコープや電子機器です。調理台の上に置かれているのも魚の切り身ではなく金属片や電子部品のかけらです。どうやらここで食わされそうなのは電子部品のようです。



 もう一方の鰻屋さんも同様です。ご丁寧に設置された伝統的な厨房の上で焼かれているのは鰻ではなく金属片です。さらに奥には巨大な神仏「鰻ドラゴン」です。いったいこれは何なのでしょうか。



 手がかりは鮨屋の厨房のさらに奥に設けられたモニター映像にあるようです。そこではこの八重洲の地で営む町会長などのインタビューが流されています。もともとこのあたりは洲というぐらいですから海に近くそこから江戸前の旬がとれました。しかし今では鰻ひとつとっても浜松やあるいは海外に産地が移っています。



 日本は八百万(やおろず)の神の国です。あらゆるものに神が宿ると信じた私たちは当然、食べ物である生き物にも神が宿ると信じていました。食べることはその神に祈り感謝することでもあります。白木のカウンターの上に神棚が鎮座しているのがその証拠でしょう。

 しかし今やデジタル時代です。デジタル時代の神はどこに鎮座しているのでしょうか。落合さんが目指したのは伝統的な食である鮨や鰻がデジタルと交わるとき、今の時代にふさわしい神が生まれるのでは、ということのように思います。

BAG
『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン』
は10月27日まで開催中です。
240913