現在公開中の映画『エイリアン:ロムルス』を観てきました。

 太陽すら見えない過酷な環境下の植民地星で働く若者たちは、遺棄された宇宙船の設備を使うことで脱出を図ろうとする。そこで待ち受けていたのは恐ろしい宇宙生物だった!

 エイリアンといえば言わずとしれた恐怖の宇宙生物です。映画を観たことがない方でも、その姿形ぐらいはどこかで見かけたことがあるでしょう。映画もあのプレデターとマッチしたクロスオーバー作含め、これまでに8作品が作られています。この映画の中でも端々に過去作品のオマージュが感じられる演出があります。

 この映画を観て気づくのは宇宙船の中で使われているモニターがブラウン管だったり、ボタンの類が四角くピカピカ光ることです。とても「今どき」の宇宙船には見えません。

 それもそのはず、この映画は第一作の『エイリアン』と第二作の『エイリアン2』の間の事件を描く、という設定なのです。つまり

1979年に公開された西暦2122年設定の「エイリアン」

1986年に公開された西暦2195年設定の「エイリアン2」
の間が

2024年に公開された西暦2142年設定の本作「エイリアン:ロムルス」というややこしいことになっているわけです。随分ピンポイントな隙間を狙ったものです。

 このため映画の中の描写は1980年代の映画技術で作られるものを前提としています。最新の技術で液晶モニターなどを使ってしまうと時代考証が、いや未来考証がおかしくなってしまうからです。なので2024年公開作にも関わらず、なんか昔の映画を観ているようなレトロ・フューチャー感があります。

 アート的にいうと、ロムルスという副題にも興味があります。ロムルスはレムスとともに古代ローマの建国神話に登場する双子の名前です。王位継承争いのために捨てられた双子は狼の乳を飲んで育ちます。東京都美術館で開催されていた「永遠のローマ展」でも狼の乳を飲む双子像が展示されていました。この映画の中でも一瞬ですが、ドアにこのシンボルマークが使われているのが見えるシーンがあります。この映画に登場する宇宙船の研究棟の名前がロムルスなわけですが、そこにはどうも新たな帝国を建設しようとする意図があるようです。

 映画自体はあの「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス監督ということで見えない恐怖を描くのはお手の物です。ただこれまでのエイリアン・シリーズを超えるような度肝を抜く描写には正直欠けているように思います。過去作にオマージュを捧げるのはよいのですが、そのために両手を縛られてしまった感があります。それだけ「1」や「2」が傑作だったということなんですよね。
240910