現在公開中の映画『ルックバック』を観てきました。
小学生の藤野は学校新聞に4コママンガを描いていて人気者だった。だがそこに強力なライバルが現れて・・・。
この映画の感想を一言で言うと「エモい」です。キャラクターもストーリーも背景も動きもすべてが「エモい」のです。わずか58分の上映時間中、観客はずっと「エモさ」に心揺さぶられます。私が見たのは日曜日の午後の回でしたが、比較的小規模なスクリーンとはいえ満席でした。これは公開から1か月近く立った作品としては驚くべきことです。いかにこの作品の「エモさ」が人を惹きつけているかがよくわかります。
原作は藤本タツキさんの同名コミックです。私は藤本さんの「チェーンソウマン」は第一部は読んでいるので馴染みがあります。しかしこの原作は未読でした。映画鑑賞後、いてもたってもいられずすぐ電子書籍版を購入して読んだほどです。
実際に読んでみると、映画は一部改変されている部分はありますが、ほぼ原作に忠実です。原作の静止画の部分を大幅に脳内補完してアニメーションにした、という感じです。
映画は時間の経過を光や動きで表現できますが、コミックではそうはいきません。原作ではこの時間の経過はただひたすら同じシーンを繰り返し描くことで表現しています。もちろんアシスタントの方の手助けもあったと思われますが、この一作を描くのに、どれだけの手がかかっているか、想像だにできません。映画の「エモさ」の根幹は、原作の作り手である藤本タツキさんの「エモさ」であり、「アツさ」でもあるのです。そして、その「エモさ」「アツさ」は実は誰の心の中にもあるものなのでしょう。だからこの原作が映画が人々の心を惹きつけるのです。
現在、入場特典として映画のシーンを収めたポストカードが配られています。選ばれたシーンは、コンビニで立ち読みする二人、手をつなぎ京本の先を行く藤野、藤野をおいかける京本、そして二人の握り合った手という4シーンです。確かにこの4シーンにこの映画のエッセンスが詰まっているといっていいでしょう。しかも完成した色付きの絵ではなく、手書きの絵コンテ状態です。ここにもこの映画の手ざわり感が込められています。ぜひ劇場で公開しているうちに、入場特典とあわせて、この映画の「エモさ」を体験体感していただければと思います。
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