現在、泉屋博古館東京で開催中の『歌と物語の絵― 雅やかなやまと絵の世界』を観てきました。本展はタイトルにあるように、歌から生まれた歌絵、物語から生まれた物語絵を紹介する展覧会です。
残念ながら写真では紹介できないのですが、本展では源氏物語、伊勢物語、平家物語、竹取物語、三国志など皆さんおなじみの物語の絵巻が紹介されています。ご存知の場面もひとつやふたつあるでしょう。例えば三国志ではあの「三顧の礼」が描かれています。物語の挿絵を楽しむ感覚で鑑賞するのがよいように思います。
私的に面白かったのは『是害房絵巻』と『鼠狐言帰絵巻』のふたつの絵巻でした。前者は天狗の是害坊のお話なのですが、登場する天狗たちにそれぞれにセリフがついていて殆ど漫画なのです。後者は狐の嫁入り、鼠の嫁入りのお話ですが、こちらはセリフこそないものの、簡略な線でデフォルメされた鼠と狐がまんまキャラクターのようで可愛いのです。
考えてみれば、歌と絵は相互に影響しあい、ひとつの画面の中で響き合うのが歌絵であり物語絵です。そこから漫画が生まれたと考えるのも楽しいでしょう。
その歌については、大昔の歌もその歌心は今となんら変わりないことにあらためて驚かされます。例えば本展の冒頭で紹介されている藤原兼輔の歌はこんなです。
人のをやのこころはやみにあらねとも
こをおもうみちにまどひぬるかな
1000年以上前にもきっと親バカってあったんでしょうね、と思える歌でした。
泉屋博古館東京
『歌と物語の絵― 雅やかなやまと絵の世界』は7月21日まで開催中です。
240710