現在、ワタリウム美術館で開催中の「梅津庸一|エキシビション メーカー」を観てきました。本展はワタリウム美術館の前身、ギャルリー・ワタリの「知られざるコレクション」を紹介する展覧会です。まずは展示風景をご覧にいれましょう。



 ロルフ・エッシャー、佃弘樹、堀内正和、吉田穂高さんの作品です。どれもエッジが効いていて素晴らしい作品ばかりです。これだけの作品を集めることができるなんて恐ろしいほどのセンスの良さです。



古沢岩美《デモンの巣》
 悪魔的で悪夢的な幻想世界が広がっています。エロティシズムも濃厚です。



麻田浩《地への回帰》
 地面の上にゴミが散乱しているようです。等間隔に四角い穴が空いていて周辺には水滴が散らばっていますが明らかに重力の法則を無視しています。このゴミとも破片ともつかない正体のわからないものをこれだけリアルに描けることに驚きます。



 高松ヨクさんの作品もシュルレアリスムの影響下にあります。どこか静かに私的な景色がそこにはあります。



 4階は「黒く閉じて白く開くように」と題されて、駒井哲郎さんと梅沢和雄さんの版画作品が展示されています。どちらも沈み込むような黒です。通常美術館の壁面は無彩色ですが、ここではあえて極彩色に塗り分けられています。白黒の世界を引き立てるようにです。

 本展ではこれらのコレクションのほか、ゲスト・アーティストも参加しています。



 例えば星川あさこさんの作品はベッドの上にさまざまなものが散乱したインスタレーションです。星川さんはアルコールを動力に制作活動を行っているそうです。これは星川さんのアトリエなのかもしれません。



 私が惹かれたのはこの息継ぎさんの作品。どれも少女の後ろ姿やおぼろげな姿を描いた作品です。

 コレクションと現代のアーティストが混在しているわけですが、とっちらかった感じはありません。なんとなくですが、どの作品にも人間の陰や孤独、寂寥感が共通しているような気がします。

 面白いのはところどころに梅津さんの作品もこそっと置かれていることです。梅津さんの作品にはクレジットも描かれていません。恐らくですが梅澤さんは自作をコレクションと現代アーティストのベンチマークとして置いたのではないでしょうか。これらの景色の中に自作を置いたらどう見えるのか、梅澤さん自身が観たかった景色ではないかと思います。

 これらのギャルリー・ワタリ時代のコレクションは現代アートを扱うワタリウム美術館にそぐわないということでこれまで未公開だったそうです。それを「どうしたらいいか」と梅津さんに相談したところからスタートしました。



 できあがった展示室は、美術展覧会というよりはコレクターのプライベートルームをのぞき見るようです。梅津さんはこれを「未然のアート」として展示することを目論んだようです。結果的には美術館がある前にコレクターたちが自分たちのコレクションを集めて作ったあの「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」のようです。

ワタリウム美術館
「梅津庸一|エキシビション メーカー」は8月4日まで開催中です。なおチケットはパスポート制で期間中であれば何度でも入れます。私も復習に行ってみたいと思います。
240614