現在、横浜人形の家で開催中の『ひとはなぜ ひとがたをつくるのか』展を観てきました。



 本展は小さな展覧会ですが紀元前の「ヴィーナス」像に始まり、縄文時代の埴輪や各国の民族人形、そして現代のアクリルスタンドまで、多種多様な「ひとがた」が紹介されています。



 その中でも異彩を放つのが工藤千尋と土井典さんの「ひとがた」です。



 工藤さんの作品は遺伝疾患のため下肢がないという自身と親族をモチーフにする作品。



 謎の人形作家と呼ばれる土井典さんの作品は、デヴィット・リンチの映画に出てきそうな異形の「ひとがた」です。どちらの作品も自身の分身をつくっているような憑依一体感があります。

 予想外だったのが後半の展示です。こちらでは「やまなみ工房」と「嬉々‼CREATIVE」所属の制作者の方々が作った「ひとがた」が展示されているのです。つまりアール・ブリュットの作り手の「ひとがた」です。そこには余計な思惑や計算がまったくない、純粋な「ひとがた」を追い求める姿があります。



 例えば森田郷士さんの「ひとがた」は黒のボールペンで描かれたシルエットのような「ひとがた」です。それはまるでマティスの絵のようにダンスしているようです。



 大原菜穂子さんの「ひとがた」は手のひらサイズのお地蔵さまです。菜穂子地蔵と呼ばれているそうです。シンプルなお顔ですがみんなこちらを向いて微笑んでいます。



 神山美智子さんの作品は一見カラフルなタイルというかモザイクのような絵です。



 ところがよくよく近づいてみると、この絵は数ミリ四方の四角形ひとつひとつに人間が描かれており、それらが隙間なくギッシリと詰まって出来上がっているのです。なんというか集積回路のような緻密な「ひとがた」なのです。

 「人形(にんぎょう/ひとがた)は人間の心のかたちと身体のかたちが独特に織り合わされている。」そうです。私はそこに人間の祈りも重ね合わされているのではないかと思います。

横浜人形の家
『ひとはなぜ ひとがたをつくるのか』展は6月30日まで開催中です。
240612