現在公開中の草なぎ剛さん主演の映画「碁盤斬り」を観てきました。

 娘のお絹と親子ふたりでつましい暮らしをしている素浪人の柳田格之進は、ひょんなことから両替屋の萬屋源兵衛と碁打ち友達になるのだが・・・。

 この映画を観て時代劇は難しいなあと思いました。なんとか仕置人のような勧善懲悪ものならともかく、この映画のような人情劇となると、いろいろ今の時代には合わないこともでてくるからです。そもそも切腹とか仇討ちとか男子の本懐とか、今の時代の若者にはピンとこないでしょう。昭和の私ですら、共感しにくいのですから。正直、格之進の言動はよく理解できない部分があります。

 この映画のもうひとつの難点は、私が碁の理解がさっぱりだということです。まあこれはこの映画が悪いわけではありませんが。盤面で繰り広げられている勝負を見ても、どっちが強いのか、どっちが勝っているのか全然わからないのです。

 一方、この映画の重要な舞台の一つである吉原については、先日東京藝術大学美術館の「大吉原展」で予習?した成果がありました。あの野っ原のなかに立つ吉原や、たったひとつしかないという大門、春の桜など、ああそういえばそうだったなあという描写がいくつもありました。

 さてこの映画の原作は脚本も書いている加藤正人さんの「碁盤斬り 柳田格之進異聞」です。しかしこの小説にもさらに元ネタがあります。落語の「柳田格之進」という演目です。私は落語もまったく知識がないのですが、伝え聞くところによると前半は概ね落語に沿って作られているようです。なるほど確かに人情噺ではあるのです。

 こうした難点は抜きにしても、映画としては少々焦点が絞りきれていなかったかなあと思います。源兵衛との友情か、お絹との親子の情か、あるいは仇討ちの怨情か、それぞれに目配りしているのはわかるのですが、思い切ってどこかにふったほうがエッジが立ったかなと思うのです。
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