現在、国立新美術館で開催中の「DESIGN MUSEUM JAPAN 2024」を観てきました。

 本展はNHKが全国47都道府県の放送局ネットワークを活用して各地の生活文化のリサーチを行った成果を発表する展覧会です。今回は6名のクリエイターの方がそれぞれの視点で着眼した各地の「デザインの宝物」を紹介しています。



 例えば竹谷隆之さんが着目したのは北海道のニシン漁で使われる漁船の化粧板です。「板子一枚下は地獄」と呼ばれる漁船ですから、漁師たちにとっては命の船であり、魂の船なのでしょう。その船に船大工たちが施した化粧板は漁師たちの心意気をそのまま表しているようです。



 小池一子さんが選んだのは秋田の西馬音内盆踊りです。盆踊りは年にただ一度の地域あげての一大行事です。その昔、娯楽が少なかったころは、最大のエンターティメントでもあったでしょう。地域の人たちはこのただ一度きりの盆踊りのために、1年かけて衣装を誂えるのです。ちなみに西馬音内盆踊りは2022年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。



 永山祐子さんは滋賀県の「野面積みの石垣」をリサーチしました。今、お城ブームで城壁が取り上げられる機会も多くなっています。「野面積み」とは自然の石をほとんど加工せずに積み上げる工法です。一見雑にも見えるこの工法は隙間と隙間が緩衝材となって丈夫にできているそうです。戦国時代から伝わるこの工法を今の世に伝える人々はごく少なく、滋賀県大津市の石工職人「穴太衆」が築いたものだそうです。

 このほか愛媛の「こて絵」や愛知の「すだれレンガ」など興味深い事例が紹介されています。

 NHKとしては、いろいろな美術館や博物館がある中で、「デザインのミュージアムがあってもよいのでは/あるべきでは」という問いかけをしています。その是非はともかくとして、私たちの身近なものの中に優れたデザインがあることを再発見することができるでしょう。

国立新美術館
「DESIGN MUSEUM JAPAN 2024」は5月26日まで開催中です。
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