現在公開中の映画「ミッシング」を観てきました。

 一人娘、美羽が突然失踪した森下夫妻。夫婦は懸命の捜索を続けるのだが・・・

 はじめに。この映画、大変重く、苦しく、辛い映画です。そもそも最愛の娘がいなくなるということだけで地獄です。しかもその地獄はブラックホールのようにまわりの人間も地獄に引き込むのです。観客はその地獄にたっぷり119分間向き合うこととなります。

 脚本も書いた吉田恵輔監督は、この地獄を執拗にリアリスティックにドキュメンタリーのように撮ります。観客は森本夫妻の隣でこの地獄を体験するのです。神経が細い人間には耐えられないかもしれません。正直トラウマレベルです。某映画サイトの口コミレビューで「名作だけど2度目は行かない」という意見が多いのもうなづけます。並の人間には耐えられないからです。その覚悟がある方にだけ、この映画をおすすめします。

 この救いようがない地獄の世界を監督が撮った意図は恐らくですが、苦しみに向き合ったとき、人はどうあるべきか、どう生きるべきかを問いかけるためでしょう。この映画は問いかけの映画なのです。映画の中に答えはありません。観客が自らの心のなかに見出すしかないのです。

 ただかろうじて、ですが、映画の中では、家族の絆や姉弟の絆、そして知人同士の絆はうす皮一枚ぐらいで繋がっています。切れてはいません。それがわずかな救いと言うか慰めになっています。

 主演の石原さとみさんはこの地獄の役を、まさに鬼気そのもになって演じています。全身全霊という言葉すらまだ足りません。ドン引きするといっていいぐらいです。ちょっと早いですが、今年の主演女優賞はもう決まりかもしれません。