現在、オペラシティアートギャラリーで開催中の「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」を観てきました。本展は日本を代表するイラストレーター、グラフィックデザイナーである宇野亜喜良さんの全貌を900点を超える膨大な作品群で紹介する展覧会です。

 一言で言って「化け物」です。その作品群の質といいボリュームといい、活動の幅の広さといい、常人ではありません。さらに90歳を超えて今なお現役という画業の長さにいたっては、もはや怪物を超えて妖怪じみてます。本展ではプロデビュー前の幼少期の絵から出来立てほやほや2021年の作品まで揃っていますが、画力に衰えは見られません。



 まず最初に展示されているこの15歳の時に描いた自画像でこの激ウマさです。



 さらに手遊びのようなこのバレエのエ絵も、今見ても古びていないセンスの良さです。もう宇野亜喜良の世界の片鱗が表れています。わずか19歳で日宣美展で入選したのもうなづけます。



 宇野亜喜良少年はその後、企業広告の分野で数々の名作を作り上げます。マックスファクターの広告ポスターなど、もう美学と美的センスの塊です。



 宇野亜喜良さんというとこのような耽美的な絵の印象がありますが、それだけではありません。挿絵画では鉛筆とアクリルを駆使してダイナミックな剣戟を描いています。いやもうどんだけ引出しを持っているのでしょうか。



 特に寺山修司さんや越路吹雪さんのコンサートや演劇のポスター群は本展のハイライトでしょう。壁一面を埋めつくすそれらのポスターはテクニックは千変万化、組み合わせは意表を突き、レイアウトは大胆不敵です。耽美的でエロスでありながら、決して下品にはならず洗練されて美しいのです。

 1970年代に入るとそこに悪魔的な美しさが加わります。当時制作されたアニメーションも紹介されているのですが、そこでは倒錯した世界が繰り広げられます。エロスと濃厚な死、つまりタナトスの匂いが交じるのです。



 後半では絵本や舞台装飾なども紹介されています。絵本では同じ題材で4回絵を変えて描いています。常に挑戦と変化をし続けるアーティストなのです。

 あの体育館のようなオペラシティのギャラリーが九十九折になって壁面だらけになり、しかもその壁一面に作品が貼られているのにさらにあふれだして、通路まで展示スペースが広がっています。おそらくこれでも宇野亜喜良さんの画業のほんのごく一部なのでしょう。いやもうお腹いっぱいです。

 美術ファンだけでなく、イラストレーターやデザイナーを目指す人、また広告業界に身を置く方も必見の展覧会だと思います。

オペラシティアートギャラリー
「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」は6月16日まで開催中です。
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